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日本の製造業、特に工場における人手不足は年々深刻化しています。
どれだけニーズがあっても、人手不足によって生産できなければ機会損失となってしまうため、製造業にとっては大きな問題です。
また、培った技術を継承する人材がいなければ、長期的な事業の存続が危ぶまれるでしょう。
今回は、工場における人手不足の原因と対策方法について紹介します。
今後も続く人手不足に対し、どうアプローチすべきか悩んでいるという企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
工場の人手不足問題
戦後の日本は、製造業の躍進によって高度成長を遂げたことで先進国の仲間入りを果たしました。
しかし現代では、日本国内および世界の産業構造は大きく変わっています。
近年の国内製造業における人手不足について、その実態や影響を紹介します。
製造業の現状
日本の製造業は、高品質な製品を生み出す高い技術力によって成長を遂げてきました。
そしてその技術革新を支えてきたのが、工場などの現場で働く技能人材です。
しかし長い年月が経ち、現在では技能人材の高齢化が進んでいます。
従来であれば現場作業を通して次世代に技術が引き継がれていましたが、終身雇用制の崩壊や少子化などによってうまく継承されていないのが実情です。
高度な製造・加工を可能にする人材の不足は、国内製造業にとって大きな課題になっています。
人手不足の実態
パーソル総合研究所が発表した「労働市場の未来推計 2030」では、日本国内において2030年に労働者が644万人不足すると推測されています。
内訳としてはサービス業の400万人、医療・福祉分野の187万人などが大きな割合を占めていますが、製造業についても38万人の不足と小さくありません。
また、経済産業省が発表した「2018年版ものづくり白書」においては、83.8%の企業が「技能人材」の確保が課題になっていると回答しました。
製造業、特に工場において高度な製造・加工技術を備えた人材は今後もますます不足することが予想されます。
人手不足の影響
工場において人手不足が起きれば、さまざまな形で事業活動に支障が出ます。
まず短期的には、受注をしても生産が間に合わず、販売機会を失ってしまうという問題が挙げられます。
欠品が頻発すれば、競合他社にシェアを奪われてしまうでしょう。
また長期的には、技術を継承する人材が不足するため、企業としての競争力が失われるという側面もあります。
製品の品質は国内製造業の大きな強みですが、技術を引き継ぐ人材がいなければ、その強みは失われることとなります。
人手不足の原因
国内で慢性化する人手不足について、その原因を3つのポイントで改めて紹介します。
【人手不足の原因①】労働人口の減少
1つ目の原因は、労働人口の減少による人手不足です。
日本では少子化がさらに深刻化し、出生率は大きく低迷したままです。
その結果、新たに労働人口として加わる世代の人数が減っているため、全体的な労働人口が減少しています。
少子化は国全体の問題であるため、自社で対策できるものではありません。
労働人口が減少しているという状況を前提として、どう事業を運営するかが問われているといえるでしょう。
【人手不足の原因②】人材の流動化
2つ目の原因は、人材の流動化が進んでいることです。
終身雇用が一般的であった時代には、入社した社員は定年退職するまで1つの企業に勤めていました。
そのため、新入社員を安定確保できれば大きな人手不足に陥ることはありませんでした。
しかし現代では、終身雇用制が崩壊しつつあります。
既存の従業員に対しても他社から好条件が提示され、引き抜かれるケースが増えているのです。
特に高度な技術を持った人材に対しては、海外の製造業やIT企業から魅力的なオファーが提示されることも多く、人材・技術の流出につながっています。
人材の流動化によって、人手の確保はさらに難しくなったといえるでしょう。
【人手不足の原因③】負のイメージ
3つ目の原因は、工場勤務に対する負のイメージです。
「きつい」「汚い」「危険」の頭文字をとった「3K」という言葉で表されるように、製造業、特に工場などの現場仕事はネガティブなイメージを持たれがちです。
実際、残業や深夜・早朝シフトなどによって肉体的に過酷な労働条件が課されている職場もあるでしょう。
また、油などを扱う作業では衣服や身体が汚れることもあります。
高温下での製造・加工や重量の大きい製品を扱う作業には危険も伴います。
製造業ではこういった負のイメージが先行し、若者がキャリアを選ぶうえでの障壁になっているのです。
人手不足問題への対策方法
人手不足は日本社会の構造的な問題であるため、企業努力だけで解決できるものではありません。
しかし、現状に合った対策をとることで、事業活動への影響を最小限に留めることは可能です。
ここでは、人手不足問題への対策を3つ紹介します。
【人手不足問題への対策方法①】イメージアップ戦略
工場の仕事に対しては、3Kのイメージが根強く残っています。
そのイメージを覆すことで、製造業での仕事に魅力を感じる若者が増えてくるでしょう。
たしかに、昔は「きつい」「汚い」「危険」な労働環境が当たり前だったかもしれません。
しかし昨今では、生産性を向上させるためのオートメーション化により、汚い作業や危険な作業は機械で行なうよう改善する現場が増えています。
また、長時間労働を禁止するなど働き方の見直しも進んでいます。
製造現場に対する古いイメージを払拭するため、自社のWebサイトやSNSなどで情報を発信しましょう。
実態を紹介して3Kのイメージが覆れば、若手人材の確保につながるはずです。
【人手不足問題への対策方法②】外国人や女性の活躍
人手不足は深刻化していますが、外国人や女性の活躍は以前よりも増えています。
うまく活用することで、人手不足の解消につながるでしょう。
特に外国人労働者については、政府による外国人技能実習制度が活用できます。
製造業では約50職種が対象となっているため、幅広く利用できるでしょう。
製造業にとっては人材の確保ができる一方、外国人労働者にとっても自国では習得が難しい技能を学べるため、双方にとってメリットがあります。
期間は最長5年ですが、技能を習得した外国人が帰国後に活躍するなど成果が出れば、その後も継続的に外国人実習生を迎えられるでしょう。
また、女性の活躍も大きなテーマです。
現場のオートメーション化を進めることで、女性が働きやすい環境を整えるなどの対策が考えられます。
【人手不足問題への対策方法③】業務と人材育成の効率化
業務と人材育成を効率化することも、人手不足への対策となります。
現在では、ITやAI技術の発展によって人手で行なっていた作業を機械に代替させる動きが加速しています。製造にかかる人手を削減できれば、そもそも人手不足が問題になることはありません。
また、人材育成にも効率化が求められます。従来のように新入社員が定年まで勤め上げる時代は終わりました。そのため、長い年月をかけてベテラン社員から技術継承をする時間はありません。
AIなどを活用した複雑な作業の機械化や、動画などを活用した高度なノウハウの効率的な引き継ぎによって、迅速に人材を育成するための仕組みを構築しましょう。新しい作業員でも問題なく業務を進められる環境になれば、技能人材の不足解消につながります。
まとめ
今回は製造業、特に工場における人手不足の現状と対策を紹介しました。
今後も人口減少が加速する日本において、人手不足が企業経営に与える影響はますます大きくなるでしょう。
人手不足は社会的な問題ですが、オートメーション化やAI技術の導入、外国人の活用など、企業レベルでとれる対策もあります。
先手を打って対策を進めておくことで、人手不足が事業にもたらす影響を最小限に留められるでしょう。
取り組み次第では、利益率の向上につながる可能性もあります。
人手不足は工場での働き方・作業効率を見直すきっかけと捉えて、ぜひ前向きな解決策を検討してみてください。
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