トレーサビリティとは?利用するメリットや向上させる方法

製造業においてトレーサビリティは、消費者へ安心・安全な製品を提供するために必要です。

実際に、消費者がトレーサビリティを意識し始めるきっかけとなったのが、BSE(牛海綿状脳症)問題における牛肉のトレーサビリティと言われています。牛肉のトレーサビリティは食品の問題でしたが、安心・安全な製品を提供することは、製造業でも建築業でも同じことです。

商品や製品の安心・安全については、PL法(製造物責任法)という法律があります。

PL法とは、製造物の欠陥によって、生命・身体・財産に損害があった場合に、製造業者等に損害賠償責任を負わせるという法律です。PL法は平成7年7月に施行され、施行以降に引き渡された製品に関して適用されます。

しかし、食品業でも製造業でも商品や製品に欠陥がないことを証明することは簡単ではありません。
近年では、複雑なサプライチェーンを経由した製品についても、安心・安全を担保することが重要です。

そこで今回は、製造業におけるトレーサビリティについて説明します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは、追跡という言葉の「トレース」と能力という言葉の「アビリティ」を組み合わせた造語です。
日本語では、「追跡可能性」と訳されます。

業界によって多少異なりますが、製造業では「原材料・部品の調達から加工、組立、流通、販売の各工程で製造者・仕入先・販売元などを記録し、履歴を追跡可能な状態にしておくこと」と定義されています。企業はトレーサビリティを確立することによって、安心・安全な製品を消費者へ提供しています。

トレーサビリティの種類

トレーサビリティには、次に挙げる2つの種類があります。ここでは、トレーサビリティの種類について説明します。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティとは、製品がどのような流通過程を経由して消費者まで届いたのかを把握することです。
把握する必要があるのは、原材料から加工・組立、卸売・小売といった一連の流通過程の情報です。製品に問題が発生した場合、この流通過程を遡って調査を行います。チェーントレーサビリティは、自社だけでは成立せず、関係する全ての企業の協力が必要です。
関係する企業が1つでもトレーサビリティを怠ると、製品のトレーサビリティ全体に影響が及びます。そのためサプライチェーンの必要条件として、製品のトレーサビリティ管理体制が確立していることが重要になります。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、工場や倉庫ごとに記録する情報のことです。部品をいつどこから入荷し、いつ生産して検品結果がどうだったか、などを記録します。
内部トレーサビリティは、流通工程において重要な情報となります。また内部トレーサビリティを構築することで、品質向上や作業効率向上を図ることも可能です。

トレーサビリティのメリット

トレーサビリティを構築することで、様々なメリットがあります。

迅速に問題を追及できる

トレーサビリティを構築することで、製品に問題があった場合、迅速に対応することができます
問題が発生した場合、まずはどこの工程の何が原因であったかを特定しますよね。
トレーサビリティを構築していれば、問題の特定が速やかに行えます。問題の特定が速やかに行えるということは、問題に対応する時間や手間などのコストを抑えることにつながります。
また、問題発生時の対応に必要なコストを削減できます。

製品の品質を向上できる

トレーサビリティは、製造工程だけに限らず、製品が消費者に届くまでの全ての流通過程を網羅する必要があります。そのため、問題が発生した時は責任の所在や原因の特定が明確になるため、対策を速やかに行えます。
自社の工程で問題を発生させないために、品質に関する意識が高まり、品質向上が図れるでしょう。
品質改善に必要な課題が明確になり、対応手段の確立と意識の改善が可能です。

顧客満足度を向上できる

自社製品を何度も購入する顧客は、製品自体に満足度を感じると同時に、製品がどのような流通経路で手元に届いたかを重視する人も多くいます。
似たような製品の場合、流通経路が明確な製品と、不明確な製品とではどちらを選ぶでしょうか。もちろん流通経路が明確な製品でしょう。トレーサビリティの構築は顧客満足度を高めることにもつながりますよ。
製造経路が明確になり、顧客満足度が向上します。

自社に対する信頼度が向上

たくさんの顧客が満足する製品を提供することは、企業の信頼度向上に必要不可欠ですよね。
そこで、顧客に対してどこで製造しているのか、どのような原材料を使用しているのかを開示することで、自社製品が安心・安全であることを証明できます。
トレーサビリティを確立することで、より企業の信頼度が上がることでしょう。外部から求められるトレーサビリティに対応することで、他社との差別化も図れます。

トレーサビリティを向上させるには

最後に、トレーサビリティを向上させる方法について説明します。

各工程を正しく記録する

トレーサビリティを向上させるには、後からでも「どのように製品がつくられたか」どのような流通経路でどのような取り扱いがされたか」を、正しく追跡できるようにすることです。
そのためには、各工程を正しく記録する必要があります。しかし、各工程を正確に記録することは容易ではありません。手っ取り早く記録しようとすると、作業者がチェックリストに記録するという方法がありますが、人が行うことであるため忘れや間違いが伴います。
トレーサビリティが必要となるのは、自工程を過ぎてから、後工程で問題が発生した時です。その時、問題が発生した製品の情報を振り返ろうとした時に、「記録していなかった…」「記録を間違っていた…」などの問題が起きてしまっては、トレーサビリティとして意味がありません。

記録を自動化する

作業者が記録を行うと忘れや間違いが伴うため、記録を自動化することがトレーサビリティの向上につながります。やむを得ず作業者が記録する場合でも、直接記入するような方法は行わず、カメラやバーコードリーダー等で記録しましょう。
また記録したデータは、デジタルデータでトレーサビリティシステムに登録するようにします。システムに登録することで、データの管理を行うことができると共に、データが欠落していないかチェックすることができます。
万が一、記録作業を忘れていたとしてもデータが欠落しているため、直ちに作業者に記録をするように警告を出すことができます。

トラブル発生時に情報共有をする

トレーサビリティの目的は、製品を安心・安全に提供するため、問題があった場合に迅速に原因を特定して改善することで、製品の品質向上を図ることです。
そのため、単に記録をすれば良いということではありません。トラブルが発生した時に記録したデータを速やかに確認できなければ、トレーサビリティを有効に活用しているとは言えません。速やかにデータを確認するためには、システム化して記録したデータのデータベースを構築します
データベースについては、内部トレーサビリティの場合は自社だけでシステムを構築することができますが、チェーントレーサビリティの場合は、サプライチェーン全体で連携することが重要です。
まずはチェーントレーサビリティを意識して内部トレーサビリティを構築し、その後チェーントレーサビリティと連携することで、更なるトレーサビリティの向上を図ります。

まとめ

トレーサビリティは、消費者の安全・安心に関わる製品や商品において欠かせないものとなっております。
製造工程や流通過程に問題があると法律で処罰を受けるため、適切な製造工程であることや流通過程であることを証明しなければなりません。
また、トレーサビリティのデータによって

  • 生産効率を高める
  • 品質を高める
  • 顧客満足度が向上する

生産効率の向上や品質の向上は、製造業にとって永遠の課題と言えます。
製品の競争力を向上させることはもちろんですが、製品を販売して利益を得ている企業の社会的責任を果たすためにも、トレーサビリティの強化に取り組みましょう。

現場帳票をデジタル化すれば、トレーサビリティの強化もできます。
特に現場帳票システム「i-Reporter」では以下のことが実現可能です。

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