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経営者は、企業の経営状態が正常であるか、または現在の事業内容が目標としている経営状態に向かっているかを常に確認し判断しなければなりません。サービス業においても同様で、サービスの品質やコスト、人員配置などが適切に行われているのかを常に把握する必要があります。
しかし、それらを把握することは容易なことではありません。とりわけ物と人が激しく動く物流業界においてはどのくらい効率的に業務が行われているのか確認するのは大変なことでしょう。
そこで今回は、経営状態を数値化して表す、物流管理指標(物流KPI)について紹介します。
物流KPIとは
物流KPIでは、
・コスト・生産性
・品質・サービス
・物流・配送条件
の3点に関して、適切な管理がされているかを判断しています。
物流KPIは、単に管理状態の把握だけでなく、経営戦略の達成目標値としても活用されています。
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なぜ物流KPIが必要なのか
KPIは、財務や組織、顧客管理、サービス等の品質など、様々な場面で活用されています。
ここでは、物流KPIの導入目的について説明します。
課題を明確にできる
物流業においては、多くの顧客を相手に業務を行うため、顧客の都合で業務量が変動します。
それによって作業者の配置も流動的に行わなければならないため、人手不足や人員過剰という状態が起こりやすくなります。
それらの業務量の変動が発生すると作業者は目の前の作業に追われ
適切な業務プロセスを適時管理することは容易ではありません。
そこでKPIを設定し、潜在的な状態を明確化することで、業務量の変動に対する課題を可視化できるようにします。
また、複数の課題がある場合には、課題に取り組む優先順位を判断することができます。
目標達成までのプロセスを明確にできる
KPIの設定により、取り組むべき課題が明確となり、課題解決へ向けた達成目標を決めることができます。
達成目標を決めることで、やるべき行動が明確になります。
目標を達成するための行動を実施した結果についてもKPIで明らかになるため
行動に対する効果の有無がはっきりと分かります。
評価基準が統一できる
KPIによって、業務の成果を数値化して、曖昧になりがちな人事評価基準を統一することができます。
評価基準が統一することによって、全ての人を公平に評価できます。
公平な評価が行われれば、社員のモチベーションの向上に繋がることでしょう。
物流KPIの計算式
物流KPIについては、平成27年3月に国土交通省発表の「物流事業者におけるKPI 導入の手引き」で紹介されています。
・コスト・生産性
・品質・サービス
・物流・配送条件
の3つのカテゴリー別に計算式を説明します。
参考)平成27年7月 国土交通省 「物流事業者におけるKPI導入のあり方に関する検討会」「KPI導入の手引き」(最終版)の公表について」
コスト・生産性
保管効率
倉庫や物流センターなど、限られた保管スペースが効率的に使用されているかを示す指標です。計算式は、保管効率=保管間口数÷総間口数です。
人時生産性、庫内作業効率
物流現場における、ピッキングや仕分け、梱包等の各作業の生産性を示します。計算式は、人時生産性(庫内作業効率)=処理ケース数÷投入人時です。
数量当たり物流コスト
商品または製品の一定数量ごとの物流コストを示します。計算式は、数量当たり物流コスト=物流コスト÷出荷数量です。
日次収支
日次単位の収支を示します。現場の課題を把握し、業務改善の成果として使用できます。計算式は、日次収支=1日当たりの収益-1日当たりのコストです。
実車率
車両が走行した距離を用いて稼働状況を示します。車両走行時の無駄削減の指標となります。計算式は、実車率=実車距離(km)÷走行距離(km)です。
実働率
運用している車両が適正に実働できているかを示します。計算式は、実働率=実働日数÷営業日数です。
積載率
車両の積載率を示します。ルートや顧客別に算出することで、配送条件やコスト、ルート等の改善に活用できます。
計算式は、積載率=積載数量÷積載可能数量です。
品質・サービス
棚卸差異
帳簿在庫と実在庫の差異を示します。誤出荷や紛失、盗難等による差異の要因を突き止めるきっかけとなり、在庫管理業務の改善に活用します。計算式は、棚卸差異=棚卸差異÷棚卸資産数量です。
誤出荷率
出荷総数に占める、誤出荷の発生率を示します。計算式は、誤出荷率=誤出荷発生件数÷出荷指示数です。
遅延・時間指定違反率
出荷総数に占める、納期遅延や時間指定違反の発生率を示します。計算式は、遅延・時間指定違反率=遅延・時間指定違反発生件数÷出荷指示数です。
汚破損率
出荷総数に占める、商品の汚れや破損など、不良品発送の発生率を示します。計算式は、汚破損率=汚破損発生件数÷出荷指示数です。
クレーム発生率
出荷または受注の総数に占める、顧客からのクレーム発生率を示します。クレーム件数を明確にし、出荷におけるサービス品質の現場を把握することで、サービス全体の品質向上の取り組みに繋げることができます。計算式は、クレーム発生率=クレーム発生件数÷出荷指示数です。
物流・配送
出荷ロット
出荷ロットそのものの数値を用います。計算式はありませんが、顧客や納品先ごとの出荷ロットサイズを明確にすることで、輸送や庫内作業、保管効率などの最適化を図ることができます。
出荷指示遅延件数
特定の期日以降の出荷指示件数より、出荷指示に遅れが発生してしまった件数を示します。特に計算式はなく、顧客や納品先別、商品または製品別で管理することで、出荷指示の遅れの傾向を把握できます。
配送頻度
配送先当たりの配送頻度を示します。配送頻度が多い場合は、車両を大きくするなどの効率化を検討します。計算式は、配送頻度=配送回数÷営業日数です。
納品先待機時間
配送後の、各納品先での待機時間の平均値を示します。配送作業者の納品先での待機時間が長い場合、対策を講じて待機時間を短縮できないか検討します。
納品付帯作業時間
納品先における付帯作業時間の平均値を示します。ここでの付帯作業とは、納品後の開梱や棚入れなど、契約の範囲を超えた作業が発生していないか数値化して確認します。
納品付帯作業実施率
納品先の作業回数において、納品付帯作業が発生する回数の割合を示します。計算式は、納品付帯作業実施率=付帯作業の実施回数÷納品回数です。
物流KPI設定方法
KPIについては、闇雲に導入しても業務上の成果を上げることは難しいでしょう。
ここでは、物流KPIを設定する方法について、カテゴリー別に説明します。
データを収集する基盤の整備
KPIを設定するためには、様々なデータが必要です。
それらのデータを収集し、整理する必要があります。
データを収集するための基盤整備が必要です。
最低限のデータとして、物流KPIを計算するための情報を収集できるようにします。
企業戦略と目標値の設定
KPIが計算できるようになったら、現状把握として現在のKPIを算出します。
その値が現在のベンチマークとなり、ベンチマークを基準に目標値を設定します。
そして目標を達成するために、どのような戦略を策定するのかを決めます。
導入に向けた準備
KPIと目標を達成するための戦略が決まった後は、戦略とKPIを社内に浸透させます。
戦略とKPIを浸透させる方法としては、社内ルールの作成や研修会等を行うと良いでしょう。
KIPの運用
実際に戦略に基づいた業務改善を行い、KPIで成果を把握します。
業務改善を実施しているのに、KPIが設定した目標に近づいていない場合は、業務改善内容の見直しを行います。
時には、戦略から見直す必要もあるでしょう。
KPIの運用管理については、DXを活用すると良いでしょう。
コスト・生産性に関するKPIを計算する場合に各作業時間の集計が必要となりますが
作業の着完時間を自動記録することで、工数把握ができ、適切な労務費を管理することが可能です。
まとめ
物流KPIを設定することで、これまで曖昧だった問題点や課題を数値で表現され、明確になります。
また、目標設定や評価基準がはっきりと決めることができるため、従業員のモチベーション向上にも繋がります。
成果に対するプロセスも管理できることでしょう。
KPIが思うように改善されない場合は、戦略まで遡って見直すことも忘れないで下さい。
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