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2019年に中小企業庁が公表した「2020年版中小企業白書」では、将来の人口減少に伴う労働者の減少が指摘されています。そこで、企業の経済活動が更なる成長を遂げるためには、労働生産性を上げることが重要な課題となっています。
しかし中小企業白書では、2003年度以降の従業員一人当たりの労働生産性は、横ばいとなっています。
さらに、我が国の労働生産性は、OECD加盟国36か国中21位となっており、1位のアイルランドの半分程度の水準です。
かつては、工業立国として世界の先頭だった日本に何が起きたのでしょうか。
日本は、生産量を増やして工業立国になりましたが、生産量に比例して労働者や労働時間も同じように増やしているため、労働生産性が横ばいのままになっています。
労働人口が減少する将来を考えると、生産量が減り、日本の産業の衰退が懸念されます。
(参考:2019年 中小企業庁「2020年版 中小企業白書(HTML版)」)
今回は労働生産性を上げるために必要な、作業工数について説明していきます!
作業工数とは
工数とは、下記のように定義されています。
作業工数とは、作業者が作業している時間のことを言います。
しかし、作業者が作業している時間と言っても様々な種類の作業が含まれます。
実際に作業をしている時間や準備をしている時間、さらには前の作業を待っている時間など、作業内容によって、区別する必要があります。
それらの作業の全てを足し合わせた時間が作業工数となり、生産に投入した労働となります。
つまり、労働生産性を上げるためには、作業工数を管理し、どれだけ少ない労働で、生産を行うかが必要です。
工数管理の必要性
労働人口が減少していく将来に向けて、労働力を効率的に活用することが不可欠なため、工数管理が必要になってきます。
工数管理は、単に記録を管理することではありません。
製造現場では、原価を左右する大きな要因となります。ここでは、工数管理の必要性について説明します。
経営の効率化
工数管理を行うことで、生産効率の向上が図れます!
例えば、売上を上げるために新たな製品を製造するとします。
すると、製品の製造をどのように行うかによって、設備投資の検討が必要になりますよね。
必要な設備については、調達すれば準備できますが、作業者についてはどうでしょうか。新たな製品を製造することが現在の人員で賄えるのか、それとも新規に作業者を雇わないといけないのか、工数管理をしていなければ判断ができません。
人件費は製造原価において非常に高い割合を占めます。安易に作業者を増やすと、製品が売れても儲けが得られないということにもなりかねません。
工数が管理できていないと新製品の製造や増産に対応できるかが把握できない
収益性の向上
現在の製品の収益性を向上させるためにも、工数管理が必要です。
製造現場では、製品コストを下げるために、日々原価低減に取り組んでいます。
通常、1日の生産が終了すると、設備のメンテナンスや作業場の清掃等を行います。
これを毎日30分実施すると、毎日30分の残業となります。そこで工数管理を行い、生産量を維持したまま、30分の作業短縮ができた場合、毎日の残業30分を無くすことができます。
また同じ30分残業をしたとしても、新たな作業が行えるため、労働時間を変えずに生産量を増やすことができ、生産性が向上します。
このように作業工数の管理は、経営上行うべきマネジメントでもあるのです。
作業工数を把握する方法
では、どのようにすれば作業工数を把握することができるのでしょうか。
一般的には、作業日報を記入する方法があります。
そこで注意すべきなのが
作業者や現場監督者による日報での申請では誤差が大きく、単なる記録になっている場合がある。
ここでは、生産性を上げるために、作業工数を把握する方法を説明します。
作業工程を自動記録する
一般的に製造現場では、決まった時間間隔のことである「タクト」で製品を生産します。
作業者は、決まったタクトタイムの中で決められた作業を行います。
しかし「タクトタイムが60秒であれば、作業時間は60秒」ということではありません。
重要なのは60秒の中身なのです。
作業者が60秒の中でどのような作業をしているのかを把握しなければ、生産性は向上しません。
例えば、作業者はまず製造指示書を確認して、必要な部品を取りに移動し、部品箱から部品を取り出します。部品を取り出したら部品箱を返却して、元の場所に移動します。
その後、部品を取り付けるために工具を取り出して、部品を取り付ける…といった一連の作業に対して、それぞれ何秒で実施しているのかを把握しなければなりません。
従来の方法であれば、管理者がストップウォッチを持って、部品を取りに行くのに何秒、部品を取り付けるのに何秒と記録していました。しかし、それでは効率が悪すぎるため、近年では作業全体をビデオに撮影して、時間を計ることが多くなりました。それでも、時間は人が計る必要があるため、効率は悪いままです。
そこで、AI技術を活用して、作業を自動で記録する方法が普及しつつあります。AI技術によって、作業者の位置や姿勢からどのような作業を行っているのか判断し、実際の時間を記録します。
現在、判断が難しい画像についても、映像が残っていれば、将来AI処理によって自動で測定が行えます。
データを一元管理する
作業工程を自動で記録したとしても、それはある作業の記録であって、その作業者以外も同じ作業時間で作業できるとは限りません。
製造業においては、作業者が変更になることは日常茶飯事に行われます。
作業者が変わることでタクトタイムが変わることがあってはなりません。
しかし作業能率には個人差があるため、同じ工程の作業であっても、複数人の作業記録データが必要です。
そこで、自動記録した作業時間をデータ化して管理します。データ化による管理を行うことで、どのような作業者であっても、タクトタイム内に収まるような工夫をすることができます。
また、データが蓄積されてくると、要素作業ごとの標準時間を求めることができます。
ある工程の要素作業時間が長い場合、時間短縮の改善を行うことも可能です。
まとめ
製造業において作業工数は、非常に奥の深い内容になります。多くの経営者が作業効率の向上を望みますが、作業効率を上げることは簡単なことではありません。
先ほど述べたアイルランドの生産性は、日本の倍となっていましたが、アイルランドの作業者は、日本の作業者より倍の速度で作業をしているのでしょうか。そうではありません。作業効率を向上させるには、作業のムダを省くことが現実的です。一見ムダの無い作業のように見えても、以外にムダな作業をしている場合があります。そのような場合は、作業工数をデータで管理して、データによってムダが無いか判断することが必要です。
日本の生産性が横ばいなのも製造現場をデータで把握し、データで判断するというプロセスが取られていないことが一因となっている可能性があります。理由として、高度成長を成功に導いた管理手法が製造現場に根強く残っていることが考えられます。当時は、作業時間を測定する方法がストップウォッチしかありませんでしたが、現在ではデジタル技術を活用した方法が多く誕生しています。デジタル技術を活用して生産性向上につなげましょう!
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