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在庫管理は、小売業や製造業など、商品を扱うすべての企業にとって重要な業務です。
しかし、「在庫管理は何をすればいいのかわからない」「適切な在庫量を把握できていない」という方もいるのではないでしょうか。
在庫管理を最適化し、売上・利益の向上につなげるためには、商品回転率を把握することが重要です。この記事では、商品回転率の意味や計算方法、高めるためのポイントなどをわかりやすく解説します。これにより、在庫管理担当者や経営者が現実的で持続可能な販売戦略を構築する手助けとなるでしょう。
商品回転率とは?
商品回転率は、一定期間内にどれだけ商品が売れているかを示す重要な指標です。
この数値は在庫管理や経営方針の効率性を評価するために使われ、在庫回転率や棚卸資産回転率とも呼ばれます。
以下で商品回転率の基本的な概念とその特徴について詳しく見ていきましょう。
商品回転率とは
商品回転率とは、一定期間内に商品がどれだけ売れたかを示す指標のことです。
在庫管理や経営の効率性を測るために用いられ、「在庫回転率」や「棚卸資産回転率」とも呼ばれ、商品回転率は、以下の2つの要素から算出されます。
- 一定期間の売上高または売上数量
- 一定期間の平均在庫金額または平均在庫数量
例えば、平均在庫が10個の商品Aが1ヶ月で30個売れた場合、商品Aの在庫回転率は「3」となり、平均在庫の価値が100万円の商品Bが1ヶ月で500万円分売れた場合、商品Bの在庫回転率は「5」となります。
商品回転率が高い場合と低い場合の特徴
商品回転率が高い場合は、商品がよく売れている状態であり、在庫の管理が効率的に行われていることを示しており、企業にとって望ましい状況だと言えるでしょう。
一方、商品回転率が低い場合は、商品があまり売れておらず、売れない商品が長期間在庫として残っている可能性が高いのです。この状況は、企業にとって改善が必要な課題であると認識すべきです。
商品回転率が高い場合、在庫費用を抑えられ、資金効率が向上するなどのメリットがあります。しかし、あまりに高すぎる在庫回転数は在庫切れを起こす可能性があるため注意が必要です。
商品回転率が低い場合は、在庫保管費用や廃棄費用などのコスト増加につながる可能性があります。また、機会損失の発生や、在庫の陳腐化といったリスクも高まります。
商品回転率が重要な理由は?
商品回転率は、商品の売れ行きや在庫の動きを可視化できるため、企業の在庫管理や販売戦略において重要な指標となります。
商品回転率を適切に管理することで、在庫の最適化や売上・利益の向上、効率的な店舗運営につながるでしょう。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 適正在庫量の把握
- 過剰在庫や品切れの防止
- 在庫管理コストの削減
- 売上と利益の向上
- キャッシュフローの改善
- 経営状況の把握
このように商品の売れ行きや在庫の動きを明確に把握することで、商品回転率は企業の在庫管理における重要な指標となるのです。
在庫管理の最適化が進むことで、利益率の向上や効率的な店舗運営が実現できる可能性が高まります。
これに加えて、適切な管理により、企業はより確実な販売計画やマーケティング戦略を立案することができるでしょう。
商品回転率の計算方法
商品回転率の計算方法には主に2つあります。商品回転率を正確に把握することは、在庫管理や販売戦略を考える上で重要な指標です。
ここからは、それぞれの方法において、計算式と具体的な例を用いて詳しく解説していきます。
金額基準の計算方法
金額基準の計算方法では、売上高と平均在庫金額を用いて商品回転率を算出します。
計算式は以下の通りです。
商品回転率(回数)= 1年間の売上総額 ÷ 平均在庫金額
平均在庫金額は、期首と期末の在庫金額を用いて以下のように計算します。
平均在庫金額 = (期首在庫金額 + 期末在庫金額) ÷ 2
計算式の解説
1年間の売上総額を平均在庫金額で割ることで、1年間で在庫が何回入れ替わったかを算出することができます。
例えば、1年間の売上総額が1億円、期首在庫金額が1,000万円、期末在庫金額が800万円だった場合、平均在庫金額は900万円、商品回転率は11.1回です。
個数基準の計算方法
個数基準の計算方法では、売上数量と平均在庫数量を用いて商品回転率を算出します。計算式は以下の通りです。
商品回転率(回数)= 出庫した総数 ÷ 平均在庫数
平均在庫数は、同様に期首と期末の在庫数を用いて以下のように計算します。
平均在庫数 = (期首在庫数 + 期末在庫数) ÷ 2
計算式の解説
出庫した総数を平均在庫数で割ることで、在庫が平均で何回補充されたかを算出できます。
例えば、ある商品が1年間で10,000個売れ、期首在庫数が1,000個、期末在庫数が800個だった場合、平均在庫数は900個、商品回転率は11.1回です。
商品回転率の目安は?
商品回転率の目安は、業種や商品の特性によって異なり同じ企業内でも、商品ごとに適切な回転率は異なります。
一般的に、食品や日用品など消費サイクルの短い商品は高い回転率が求められ、高級品や耐久消費財などは、比較的低い回転率でも問題ないケースが多いです。
業種 | 商品回転率の目安 |
製造業 | 11.1回 |
卸売業 | 19.9回 |
小売業 | 11.4回 |
小売業の中でも、日常の生鮮食品を小売りする飲食料品小売業の商品回転率は17.1回、織物・衣服・身の回り品小売業は5.1回、家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業は6.8回と、業態によって大きな差があります。
【出典】 経済産業省「4.中小企業の商品(製品)回転率|商工業実態基本調査」
商品回転率を把握しておくメリット
商品回転率を把握することにより、企業は効率的な在庫管理を行えるようになります。
ここでは具体的なメリットである、以下の4つについて見ていきましょう。
- 在庫管理の適正化
- 廃棄ロスの削減
- マーケティング施策の改善
- キャッシュフローの改善
在庫管理の適正化ができる
商品回転率は、商品の販売スピードを把握する指標となり、適切な在庫量を維持する上で欠かせません。
商品回転率が高い商品は、売れ筋商品とみなされるため、在庫切れを避けるために十分な量を確保することが重要です。
一方で、商品回転率が低い商品は、在庫が過剰である可能性を示唆しており、仕入れ量の調整や販売促進策を検討する必要があります。
例えば、アパレルメーカーを例に考えてみましょう。過去の販売データやトレンドを分析し、商品回転率の高いデザインやサイズの商品は多めに在庫します。逆に、回転率の低い商品は在庫数を抑えるなど、商品ごとに適切な在庫量を設定しましょう。
このように、商品回転率に基づいて在庫管理を行うことで、機会損失と不良在庫のリスクを抑えながら、販売機会を最大化することが可能です。
廃棄ロスの削減につながる
食品や化粧品など、賞味期限や消費期限のある商品は、在庫の長期保管によって品質劣化や陳腐化のリスクが高まります。
商品回転率を把握することで、賞味期限や消費期限が近い商品に対しては、割引販売やキャンペーンを実施することで、回転率の低い商品の積極的な販売を促進し、廃棄を最小限に抑えることができるでしょう。
また、仕入れ量の適正化に関しては、過去の販売データや商品回転率の分析を行い、適切な量の商品を仕入れることで、在庫の長期滞留を防ぐことが重要です。
これにより、在庫管理の効率化とともに、販売機会を最大化する道を開くことができます。
これらの対策によって、廃棄ロスを削減できるだけでなく、食品ロスなどの社会問題解決にも貢献できるでしょう。
マーケティング施策の改善に活用できる
商品回転率は、在庫管理だけでなく、顧客ニーズを把握し、マーケティング戦略に活かすための重要な指標です。
回転率の高い商品は、顧客ニーズに合致した人気商品として、更なる売上拡大を目指すことができます。一方、回転率の低い商品は、需要不足や商品価値の伝達不足が示唆されるため、商品改善、ターゲットの見直し、効果的な広告展開など、テコ入れが必要です。
商品回転率を分析することで、顧客ニーズを捉えた戦略を立案し、顧客満足度と売上向上を実現できるでしょう。
キャッシュフローの改善が期待できる
回転率が高いということは、商品が売れて在庫が現金化するまでの期間が短縮されることを意味します。
また、適切な在庫管理は、保管スペースの削減、在庫管理にかかる人件費やシステム運用コストなど、様々なコスト削減にもつながるでしょう。
これらのコスト削減は、企業の収益性を高め、更なる成長のための資金を創出する効果があり、企業は新たな商品開発や設備投資など、事業拡大のための資金を確保しやすくなります。
商品回転率を高めるためのポイント
商品回転率を高めるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 目標となる商品回転率
- 在庫管理の適正化
- リードタイムの短縮
- 販売価格や戦略を見直す
それぞれの要因を検討し適切な対策を行うことが大切です。
目標となる商品回転率を設定する
商品回転率を向上させるためには、まず目指すべき具体的な目標を設定することが重要です。
目標を設定することで、具体的な数値目標に向かって在庫管理に取り組めます。
設定した目標に対して進捗状況を定期的にチェックし、必要に応じて目標値を調整しましょう。
在庫管理の適正化を進める
需要予測に基づいて適正在庫量を確保し、過剰な仕入れを避けましょう。過去の販売データやトレンドを分析し、需要を予測することが重要です。
また、リアルタイムで在庫の動きを把握し、過剰在庫や欠品を防ぐために、在庫管理システムの導入を検討しましょう。
棚卸し方法を見直し、効率化することで、無駄な在庫を減らすことも効果的です。
リードタイムの短縮を目指す
リードタイムとは、仕入れから販売までの期間のことです。リードタイムを短縮することで、商品が早く回転するため、商品回転率の向上につながります。
取り組みの例としては、サプライチェーンの効率化や供給業者との連携強化などが挙げられます。
サプライチェーンとは、商品が供給元から最終消費者に届くまでの流れを指しますが、これをマネジメントすることで、情報共有や業務の標準化が進み、結果としてリードタイムの短縮に効果が現れるでしょう。
販売価格や戦略を見直す
需要や市場の動向に合わせて販売価格や戦略を見直すことも、回転率向上には有効です。
価格設定の見直しや、広告やプロモーションなどによる販売促進活動の強化、新たな販売チャネルの開拓などを検討してみましょう。
また、セールやまとめ買い割引などの販売促進策を活用することも在庫の早期解消に効果的です。
商品回転率向上には適切な在庫管理が必須
今回は、商品回転率について解説しました。商品回転率は、企業の収益力に大きな影響を与える重要な指標となります。
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