小売業のDXは難しい?具体例とよくある課題、解決のためのポイント

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル化やIT化を進めて自社の経営課題を解決し、ビジネスモデルや仕組みそのものを変革することを意味します。製造業界や医療業界はもちろん、オンラインの需要が高まっている小売業界でも重要な取り組みです。

そこで今回は、小売業におけるDXの必要性や取り組みの具体例、施策を進める際の課題と解決策について解説します。実際にDXに成功した事例と導入したシステムもご紹介しますので、DX推進に向けた実行計画を検討中の企業様はぜひ参考にしてください。

DXが必要とされる小売業界の現状・課題

小売業におけるDXとは、小売に関わるサービスや業務プロセスなどを変革して新たな仕組みを構築し、顧客体験の向上や新たな市場創造を試みるための取り組みのことです。DXの実現に向けて、AI(人工知能)やIoT、IT技術などのテクノロジーが活用されます。こちらでは、DXが必要とされる小売業界の現状や課題を解説します。

アナログな対応・処理が必要なシステム

小売業界では、時代に合わせた体制や仕組みの構築が進んでいない小売事業者も少なくありません。例えば、電子マネー決済やECサイトの導入などが遅れているケースです。「スマートフォンを使って買い物や決済を済ませたい」という顧客ニーズに対応できておらず、集客や売上の低下の原因となっています。

小売業界は消費者に近い業界だからこそ、変化に対する迅速・的確な対応が必要です。事業の存続や成長の加速には、デジタルツールを活用することで顧客に新たな価値を提供するDXの推進が欠かせません。

人材不足の深刻化

小売業界は、少子高齢化や働き方改革の不足などの影響により、人手不足が深刻化しています。新型コロナウイルス感染症の流行によって店頭での感染予防対策が必要になり、業務負担が増大したことで、さらに人手不足感が増しているのが現状です。

少子高齢化が進む現代で人材不足を解消するには、DXの推進による業務効率や生産性の向上が重要となります。例えば、セルフレジを設置してレジスタッフを削減したり、タッチパネルで注文できるシステムを導入したりすることで、店舗の省力化につながります。また、デジタル技術の活用で時代に適したニューノーマルな働き方を実現できれば、小売業界に抵抗のあった求職者からの評価も高まり、人材不足を解消しやすくなるでしょう。

原材料のインフレ

小売業界では、円安や燃料費の値上がりによる原材料費の高騰も大きな問題です。競合他社や取引先との兼ね合いから価格に転嫁できていない企業も多く、経営の圧迫につながっています。

DXの推進は、原材料価格の高騰への対策にも有効です。例えば、接客ロボットを導入することで人件費を削減したり、ITツールを活用して仕入れにかかる労務費を可視化し、改善策を検討したりなどの方法が考えられます。今後も続くと予想される原材料費の高騰に対応するためにも、DXの必要性が高まっています。

小売業のDXに向けた取り組みの具体例

小売業の現場では、上記の課題を解決するためにさまざまな施策が実行されています。こちらでは、小売業のDXに向けた取り組みの具体例とその効果をご紹介します。

システム導入による店舗運営の効率化

小売業における店舗運営の効率化に役立つのが、各種システムの導入です。在庫管理や受発注、顧客管理、マーケティング業務などを効率化でき、人手不足や原材料費の高騰に対応しやすくなります。

取り組みの例としては、キャッシュレス決済の導入やPOSレジによる顧客データの蓄積・分析、アプリやAIを活用した在庫管理や販売計画の自動化・省力化などが挙げられます。そのほかには、帳票管理システムの導入による受発注管理の効率化・安定化なども有効です。

ECサイトの展開

ECサイトの展開は、小売業における基本戦略の1つといえます。スマートフォンが普及した現代で売上を伸ばすには、オフラインだけでなくオンラインの顧客も取り込む必要があるためです。

しかし、実店舗とECサイトを別々に機能させているだけでは、リアル店舗のショールーム化を招きかねません。そこで重要となるのが「OMO(Online Merges with Offline)」です。実店舗とECサイトなど複数の販売チャネルを融合させる施策で、顧客が販売チャネルの違いを意識することなく、シームレスに買い物ができる仕組みの整備を目的としています。

OMOを実現するには、顧客接点や商品管理、決済などをデジタル化する必要があり、DXの推進が欠かせません。デジタルツールの導入などを通してDXを進め、OMOを成功させることで顧客満足度の向上やオムニチャネルの実現、販売機会の損失防止などのメリットが期待できます。

小売業のDX推進を進める際のポイント・注意点

DXを進めるうえで意識するべきポイントは、業界や業種ごとに異なります。そこで続いては、小売業でDXを推進する際の注意点を解説します。

DX推進を含む経営戦略の明確化

DXを進めるには、経営戦略を明確化したうえで従業員に周知することが大切です。DXはあくまで目的達成のための手段であり、目標となる経営戦略を明確にしておくことはDX推進の成否に大きく影響します。十分に経営戦略が練られていない状態でDXに取り組もうとしても、期待する成果を得られない可能性があります。DX導入に対して従業員の賛同や積極的な姿勢・行動が得られない、売上や利益の向上につながらないなどの悩みを抱えている場合は、まず経営戦略の見直しから始めましょう。

既存システムとの連携や共存

小売業におけるDXの推進には、デジタルツールやIT技術の活用が欠かせません。新しいツールを導入する際は、既存システムとの連携や共存も考慮して選定しましょう。既存システムに慣れているがゆえに、新しいツールの導入に対して抵抗感を持つ従業員がいるケースも想定されます。既存システムとの連携や共存が可能なツールを選ぶことで、従業員の不安を払拭し、組織全体でDXに取り組みやすくなります。また、既存システムに蓄積された膨大なデータを活用することで、最短でDXの実現を目指せるのもメリットです。

デジタル人材の採用・教育

DXの取り組みには、ITや先端テクノロジーに関する知見が豊富なデジタル人材の存在が必要不可欠です。しかし、小売業ではITに明るい人材が必ずしも在籍しているとは限らないため、自社のDX施策を担当するデジタル人材を採用・教育する必要があります。

社内人材の教育には、国が提供する「デジタル人材育成プラットフォーム」の活用をおすすめします。DXの推進に必要なデジタルスキルを取得できる、オンライン学習プログラムです。受講者のリテラシーに応じて、基礎的な知識だけでなく実践的な能力を身につけることも可能なため、小売企業におけるデジタル人材の育成に役立ちます。

【参照】「卸売・小売業界において活用可能なDX推進・デジタル人材育成に関する施策について」(経済産業省、商務情報政策局 情報技術利用促進課)

小売業のDX推進においてよくある課題

小売業におけるDXの重要性は理解しているものの、取り組みが進んでいない企業も少なくありません。こちらではその理由と対策を解説します。

拠点ごとに個別最適化された業務ルールの存在

小売店で必要な業務は、接客や仕入れ、売上管理、在庫管理など多岐にわたります。それぞれの業務は、扱う商品や販売戦略に応じて拠点ごとに個別最適化されているケースが多い傾向にあります。そのため、例えば業務管理システムを導入し、すべての拠点における業務ルールを一気に統合するのは難しいのが現状です。DXの推進によって現場が混乱してしまい、かえって業務効率の低下を招くおそれもあります。まずは一部の店舗にのみシステムを導入し効果検証を行うなど、スモールスタートを意識することが重要です。

既存の体制・方法を変えることに対する従業員の抵抗

現場におけるDXを拡大するフェーズでは、既存のルールや仕組みを変更することに対する従業員の抵抗も予測されます。DXの重要性や緊急性が現場に浸透していないのが原因です。

これを防ぐには、全社員を対象としてDX研修を実施してリスキリングを促したり、経営層が直接DXの目的や期待できる効果を従業員に伝えたりするのが良いでしょう。顧客体験の向上だけでなく、業務効率化など従業員にとってもメリットがあることを理解してもらう必要があります。

従業員のデジタル技術に関する知識の不足

DXを推進するには、専任の担当者を配置するのが理想です。しかし、従業員のデジタル技術に関する知識が不足しており、担当者を選定できないケースも少なくありません。

そのような場合は、専門家を招いて研修を実施するなど、従業員のリテラシーを高める施策に取り組みましょう。近年ではオンラインやeラーニングで受講できる研修も多く開催されているため、忙しい小売業の現場でも安心して参加できます。

小売業におけるDXの成功事例

小売業におけるDXの実現には、現場帳票の電子化システムである「i-Reporter」の導入がおすすめです。こちらでは、i-Reporterを活用してDXに成功した企業様の事例をご紹介します。

QSCチェックの電子化で業務効率化と年間約220万円のコスト削減を実現

飲食チェーン店を手がける株式会社トリドール様は、食の感動を提供するために日々のQSCチェックを重視しています。QSCとは、Quality(品質)・Service(サービス)・Cleanliness(清潔さ)の総称です。同社の各店舗では、店長が各項目を毎日チェックし、本部へ共有することでクオリティの維持に努めています。

しかし、以前はチェックシートを紙で管理しており、作成や運用に手間がかかっていました。本部へ共有するためにチェックシートをPDF化する必要もあり、業務効率の低下を招いていました。そこで導入されたのがi-Reporterです。

i-Reporterの導入後はチェックシートを電子化し、QSCの管理をタブレットで行える仕組みを構築しました。チェックの完了後はクラウド上のサーバーにアップロードするだけで共有できるようになり、業務改革を実現しています。QSCチェックの実施率が上がったことで、マネージャーによる店舗状況の確認業務が不要となり、年間約220万円のコスト削減につながっています。

こちらの事例の詳細が気になる場合は、こちらのページよりご覧ください。

【i-Reporter導入事例】i-Reporterを国内800店舗に展開しQSCチェックを電子化。

小売業のDXを進めてニューノーマルな時代へ対応しよう

今回は、小売業の現状やDXの具体的な取り組み例、よくある課題、解決策についてお伝えしました。DXは、小売業が抱える人材不足やコスト増大などの課題の解決、多様化する顧客ニーズへの対応に欠かせない施策です。DXの推進やデジタルの活用によって業務の効率化・省力化を実現し、新たな顧客体験の創出に役立てましょう。

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