HACCPとは?基礎知識と7つの原則、メリット・デメリット、注意点

HACCPとは、食品の安全性を確保するための衛生管理手法です。食品の製造・流通のグローバル化に対応するために、2018年に食品衛生法の法律が改正され、2021年6月1日からは、食品製造を手掛ける大規模事業者から飲食店などの小規模事業者まで、すべての食品関連事業者に対して完全義務化されました。

本記事では、HACCPに関する基礎知識とあわせて、HACCPの7つの原則や導入するメリット・デメリットについてご説明しますので、ぜひ参考にしてください。

HACCPに関する基礎知識

HACCPを導入するためには、HACCPについて正しく理解する必要があります。

HACCPを導入する前に知っておきたい、HACCPの基礎知識をご説明します。

HACCPとは、日本語では「危害要因分析重要管理点」と表され、食品事業者が製品の安全性を確保するために行う、衛生管理の手法を指すものです。「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字を取ったもので、「ハサップ」と読みます。

HACCPは、「Hazard Analysis (HA)」と「Critical Control Point (CCP)」の2つの考えを組み合わせたものです。

「Hazard Analysis」とは「危害要因(ハザード)分析」の意味で、製品を口にした人が食中毒など何らかの危害を被る可能性がある要因を指します。たとえば、病原微生物や刃物、食品添加物などがあります。

また、「Critical Control Point」とは、「重要管理点」の意味です。危害要因を軽減するために原材料の入荷から製品の出荷までの工程を管理するもので、食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を、食品事業者自らが把握したうえで行います。

つまり、原材料の入荷から製品の出荷までのすべての工程において、どのような衛生管理上のリスク(Hazard)があるのかを調査・分析(Analysis)しリスクを最小限に抑えるための重要(Critical)な工程(Point)を管理(Control)するものです。

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HACCPの7つの原則

HACCPには「7原則12手順」のガイドラインがあり、導入する際には手順や原則に則って進めます。
7つの原則の詳細を解説します。

原則1:危害要因分析の実施

まず初めに行うのが、危害要因分析の実施です。工程ごとに考えられる危害要因を洗い出し、情報をまとめます。具体的には、調理や運搬、販売などのそれぞれの工程のなかで考えられる、さまざまな危害要因を取り上げます。

さらに、取り上げた危害要因によって起こり得る被害やその大きさ、根拠などまで挙げることが重要です。危害要因を避けられれば、製品による危害(被害)の減少につながります。

原則2:重要管理点(CCP)の決定

製品の安全を管理するための重要な工程を決めるのが、重要管理点(CCP)の決定です。原則1で洗い出した危害要因を除去・低減するために必要な、とくに重要な工程を決定します。

たとえば、食品工場で食材を加工したり、集団給食施設で食材を調理したりする場合、食中毒菌を避けるには加熱処理が必要になるため、重要管理点は「加熱」です。

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原則3:管理基準(CL)の設定

管理基準(CL)の設定では、原則2で決定した重要管理点を管理するための基準を設けます。

たとえば、重要管理点が「加熱」の場合、「中心温度75℃で1分以上の加熱」といった基準を設定します。ただし、基準は定量的なものでなければなりません。

原則4:モニタリング方法の設定

モニタリング方法で設定するのは、原則3で設定した基準を満たしているかを確認するための測定方法です。設定した測定方法に沿って、すべての製品が基準を満たしているかを監視します。

たとえば、中心温度を測定する場合、だれが・なにを使って・どのようなタイミングで測定するかを決めます。

原則5:改善措置の設定

改善措置で設定するのは、原則4の測定方法で監視をし、基準を満たしていない場合の手順です。基準を満たさなかった原因を調査し、その製品をどのように取り扱うかを決めます。

たとえば、温度設定の誤りなどで十分に加熱されていなかった場合は、廃棄や再加熱などの改善措置を行います。

原則6:検証方法の設定

検証方法の設定で行うのが、設定したことが守られているかの確認です。「計画通りに衛生管理できているか」「修正の必要はないか」を、適切な頻度で現場確認します。

原則7:記録と保存方法の設定

記録と保存方法の設定では、モニタリングの結果や改善措置の内容などの記録方法と保存期間を設定します。情報は登録したら終わりではなく、一定期間保管し、定期的に見直すことも重要です。

また、万が一健康被害などの食品事故が生じた際に、記録があれば衛生管理状況を証明できるため、記録と保存もしっかりと行わなければなりません。

参考:厚生労働省「HACCP入門のための手引書」
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HACCPとは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Contro
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HACCPを導入するメリット・デメリット

HACCPを導入することには多くのメリットがある一方、注意しなければならないデメリットもあります。

HACCPのメリットとデメリットをご紹介します。

HACCPを導入するメリット

食品の安全性が向上する

HACCPの導入によって危分析ができれば、食品事故を未然に防げる可能性が高まるでしょう。食中毒などのリスクを低減できるため、安全な食品の提供につながります。

品質の安定につながる

品質の安定につながることも、HACCPを導入するメリットの一つです。食品製造業の全ての流れにおいて、手順や基準を設定して衛生管理を徹底することで、品質を一定以上に保てます。

衛生に対する従業員の意識が向上する

衛生管理の方法を計画書として見える化することで、無意識になった衛生管理に向き合えることもメリットです。

また、HACCPを導入するためには、運用を推進する「HACCPチーム」を編成しなければなりません。HACCPチームが先頭に立ち、他の従業員を指導することでも、衛生に対する意識が向上するでしょう。

作業効率がアップする

HACCPを導入する際に行うすべての工程の見える化は、作業工程の見直しにも役立ちます。工場での加工から包装までの流れといった製造工程を最適化し、無駄な工程を削減することで、作業効率の向上につなげられるでしょう。

従業員への教育が均等になる

HACCPを導入して衛生管理のルールが構築すると、食品安全に関する従業員への教育を平準化できます。

自己防衛につながる

万が一食品事故が発生すると、保健所が原因の究明に当たります。その際、HACCPを導入していたか否かで、処分に差が出るのです。

企業がHACCPに基づいて適切に衛生管理を行っている場合、業務・営業停止処分の日数などが軽減されます。

HACCPを導入するデメリット

手間がかかる

HACCPの導入の最も大きなデメリットが、手間がかかることです。HACCPの考え方を取り入れた衛生計画書などの書類を作成したり、衛生管理と記録を毎日行ったりしなければならないため、多くの手間と時間がかかります。

また、従業員への周知も行う必要があり、事故につながる工程(危害要因)が判明したら、是正処置として新しい工程を考えてマニュアル作成しなければならないため、さらに大きな手間がかかるでしょう。

コストが発生する場合がある

設備投資にコストが発生する可能性があることも、HACCPを導入するデメリットの一つです。基本的には、コストをかけずにHACCPを導入できますが、事業者によっては設備が必要になる場合もあるでしょう。

すべての食品事故を防げるとは限らない

HACCPを導入したからといって、すべての食品事故を防げるとは限りません。HACCPは衛生管理の手法に過ぎないため、人間が運用・管理している限りミスは起こりうるため、すべての食品事故を防ぐことは不可能です。

HACCP導入にあたっての注意点

HACCPを導入する際には、いくつか注意点があります。

「HACCP対応の○○」という製品に気を付ける

近年、食品関連事業者で「HACCP対応の○○」を謳い文句とし、製品を販売しているところがあるため注意が必要です。たとえば、「HACCP対応の包丁」などがありますが、「これを使えばHACCPの規格や制度化に対応できる」という製品はありません。

なんらかの認証を取得する必要はない

HACCPを導入する際に、認証取得は不要です。製造過程や工程、マネジメントシステムなどの認証を取得しなくても、文書や計画書によって、HACCPを実行していることが証明できれば問題ありません。

HACCPの運用・管理を効率的に行うならシステムの導入がおすすめ

HACCPは義務だからではなく、適切な衛生管理を行っている証明として、従業員の衛生意識の向上や、消費者や取引先からの信頼を得るために取り組むべきです。また、HACCPを通じて、製品の見直しや改善が進むことで、品質向上も期待できるでしょう。

自社でHACCP対策を行うなら、システムの導入が欠かせません。多くのシステムのなかでもおすすめの「i-Reporter」は、従来の紙の現場帳票を電子化して、さまざまな業務課題を解決するシステムです。

「i-Reporter」は、業種や規模、店舗・施設の従業員数を問わず活用していただけます。HACCP にも対応しており、食品関連事業者の衛生管理に関する業務の簡略化や効率化の実現や、クレームや危険の未然防止に大いに役立ちます。

「i-Reporter」の公式サイトでは、現場の「見える化」を推進するためのよくある質問(FAQ)や成功例などがわかる、2024年(令和6年)最新版の資料を簡単にダウンロードできますので、ぜひ一度チェックしてみてください。

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