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工事見積書とは、工事費用の概算を記載した書面を指します。見積書という名称からただ金額を提示するだけのものと勘違いされがちですが、工事見積書にはさまざまな役割があり、受注率にも影響する重要な書類です。
そこで今回は、工事見積書の主な役割や記載項目、作成時のポイントについて解説します。ダウンロードしてすぐに使用できるテンプレートもご用意しましたので、工事現場の責任者やご担当者様はぜひご活用ください。
工事見積書の役割
工事を実施する場合は、内容に関係なく工事見積書を作成し、顧客へ提出するのが一般的です。工事における見積作成にはどのような意味があるのでしょうか。こちらでは、工事見積書の役割を解説します。
工事内容の説明
工事見積書は、工事内容とそれにかかる費用を顧客に提示するために作成される書類です。見積書を用いて具体的な取引内容やスケジュール、使用する材料、費用などを明確に示すことで、顧客の工事に対する不安を解消できます。
建設業法第20条では、建設工事の受注者に対して工事の内容や労務費、スケジュールなどを明らかにしたうえで、見積りを行うように求めています。努力義務ではあるものの、工事見積書を作成することで顧客は今回の工事に関する正確な情報を得られ、納得感を持って工事を進められるでしょう。
【出典】「昭和二十四年法律第百号 建設業法」(e-Gov 法令検索)
認識の違いによるトラブル防止
工事見積書には、発注者・受注者間における工事内容の認識の違いによるトラブルを防止する役割もあります。見積書の作成を通して工事価格のすり合わせや工事の条件を明確にしておくことで、工事の進行中や完了後に発生し得るトラブルを未然に防止できます。万が一トラブルが発生した場合でも、口約束ではなく見積書を作成していれば、以前合意した内容を基に話し合うことが可能です。
また、工事の途中で変更や追加が発生した場合でも、見積書を更新し、関係者間で共有することで認識のズレを防ぎ、円滑に工事を進めやすくなります。
顧客との信頼関係の構築
工事見積書は、顧客との信頼関係を構築するうえでも重要な役割を果たします。具体的かつ正確な見積書を提供することで、顧客からの信頼を獲得でき、安心して工事を発注してもらえるようになるでしょう。また、工事見積書の作成にともない顧客と適切なコミュニケーションをとり、要望に柔軟に対応できれば、顧客満足度の向上にもつながります。
工事見積書の記載内容
工事見積書は、表紙・内訳書・条件書の3つに分けて制作するか、もしくは1枚のページに情報を集約して制作する方法の2つがあります。どちらの方法を選択する場合でも、必要な情報を記載し、顧客が工事の全体像を把握できるような書面にすることが大切です。こちらでは、工事見積書を表紙・内訳書・条件書に分けて制作する場合の記載内容について解説します。
見積書の表紙に記載する内容
工事見積書の表紙には、今回の工事の概要を記載します。主な記載項目は以下の通りです。
- タイトル
- 発行日
- 顧客の会社名・担当者名
- 見積金額(合計金額)
- 見積書の有効期限
- 工事名
- 工事場所
- 工期
- 支払条件
- 見積書を作成した会社名・代表者の氏名
なお、国土交通省の「公共建築工事見積標準書式」を基準に見積書を作成する場合は、従業員の社会保険料に関する項目である法定福利費を記載するケースもあります。
【出典】「公共建築工事見積標準書式(建築工事編)」(国土交通省)
見積書の内訳に記載する内容
内訳書は「見積明細」と呼ばれる書類です。表紙に記載した合計金額の根拠となる、個別の工事の詳細を記載します。主な記載内容を以下でご紹介します。
項目
項目の欄には、工事の内容や名称を記載します。「コンクリート工事」などの工事項目を記載し、その下に使用した資材やかかった経費などを並べるのが一般的です。値引きを行った場合は、その旨も記録します。発注者が内訳を細かく確認できなくなってしまうため、「△△工事一式」のようにまとめて記載するのは避けましょう。
数量
数量には、該当工事で使用した資材の数を記載します。経費など数量で表すのが難しい項目は、「一式」と記載することもあります。3桁ごとにカンマで区切り、数字が大きくなっても見やすいように工夫するのがおすすめです。
単位
見積書の内訳に使われる単位には、「式」「個」「回」「m3」などがあります。使用した資材ごとに適切な単位を設定しましょう。
単価
見積書の内訳には、各項目に対する単価も記載します。数量と同様に、3桁ごとにカンマで区切って見やすいように工夫しましょう。
見積金額
見積金額の欄には、資材や経費ごとの費用の合計金額を記載します。「数量×単価」で算出が可能です。
備考
備考欄には、上記以外に発注者に伝えておくべき補足事項や、注意点などを記載します。
条件書に記載する内容
条件書は、工事見積書を作成するにあたり、顧客の要望が記載された書面です。基本的に発注者が作成するため、施工会社や工務店が用意する必要はありません。
工事見積書を作成するときのポイント
続いては、工事見積書を作成する際のコツを解説します。情報が伝わりやすい工事見積書を作成するには、以下のポイントを押さえておくと効果的です。
見積書のテンプレートを活用する
工事見積書を作成する際は、テンプレートを活用すると記載内容の抜けや漏れなどを防ぎやすく、作業効率もアップします。自社に合ったテンプレートを選択し、必要な情報を入力することで、効率的に見積書を作成できます。また、建設業界向けのソフトを利用し、自社専用の工事見積書を作成するのもおすすめです。
内訳は見やすくなるよう工夫する
工事見積書の内訳は、見やすくなるように工夫しましょう。具体的には、階層分けやグループ化を行い、顧客が内容を一目で理解できるようにするのが理想です。また、言葉では説明が難しい部分には、図面や仕様書などの関連資料を添付して補足するのも重要です。
見積内容を変更する場合は変更前の内容も記載する
工事の着手後に変更工事や追加工事が発生し、見積内容を更新する場合は、必ず変更前の内容も併せて記載しましょう。見積書変更の経緯を明確にしておくことで、追加工事でトラブルが発生した場合でも対応しやすくなります。
工事見積書の記載例とテンプレート
最後に、幅広いシーンで活用できる工事見積書の記載例とシンプルなテンプレートをご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
工事見積書の記載例
工事見積書のテンプレート
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工事見積書を正確に作成して受注率のアップを実現しよう
今回は、建設業や建築業における工事見積書の概要や主な記載内容、書き方のポイントについてお伝えしました。工事見積書は、顧客と工事に関する情報共有を行うための重要な書類です。正確な情報を記載しておくことで、トラブルの発生防止や顧客の信頼獲得にもつながります。テンプレートなどを活用して抜けや漏れがないように作成し、受注率のアップを実現しましょう。
建設業や建築業界では、工事見積書以外にもさまざまな書類を作成します。作業報告書や手順書、注文書、請求書などが代表例です。これらの書類の作成や管理は現場の負担になりやすいため、作業を支援するシステムの導入をおすすめします。
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