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ISO45001とは、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。ILOによると、職場での大事故は年間278万件にものぼり、労働環境の安全確保は全世界共通の課題となっています。 そのため、ISO45001の対応は、働く人々の安心、ひいては社会的信頼の向上にもつながる取り組みです。
今回はそんなISO45001について、概要やメリット、導入のポイントなどをわかりやすく解説します。企業の経営者・管理職、人事・総務担当者、安全衛生担当者などは方々はぜこの記事をご確認ください。
ISO45001の概要
まずはISO45001の定義や導入の目的、 OHSAS18001との違いなど、基本的な内容、基礎知識を解説します。
ISO45001とは?
ISO45001とは、2018年3月12日に策定された労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS: Occupational Health and Safety Management System Standard)についての国際規格です。労働安全衛生マネジメントシステムとは、安全衛生管理における仕組みのことを指します。ISO45001は、業種業態を問わず労働安全衛生の向上に役立つマネジメント規格です。日本規格協会(JSA)などが手引書の販売やセミナーといった普及活動、サポートを行っています。
なお、日本国内にはJIS規格(日本産業規格)の「JISQ45100」も存在しています。JISQ45100は、 ISO45001に日本独自の要求事項をプラスした日本のISO45001です。
ちなみにISO45001に引用規格はありませんが、附属書Aにおいて他のISO規格やILOガイドラインなど15種類の参考文献が紹介されています。
【出典】厚生労働省:労働安全衛生マネジメントシステム
ISO45001を導入する目的
ISO45001は、働く人のリスクを防いで、安全で健康な職場を実現するのが目的です。認証取得に取り組むことで労働環境を改善し、企業価値を高められます。
またISO45001は世界で評価される国際規格であり、認証取得が信頼の証になります。社会的な信頼性や従業員満足度の向上、市場競争力の強化などにつながるでしょう。
OHSAS18001との違い
OHSAS18001は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。2021年3月に廃止され、ISO45001に移行、統合されました。
ISO45001では「組織の状況」や「リーダーシップ及び働く人の参加」などの新たな要求事項が追加され、詳細化されています。OHSAS18001はISO45001の前身ともいえる規格であるため、システム自体の目的に大きな違いはありません。いわばISO45001はOHSAS18001の改訂版です。
なお、 ISO45001にはISOの共通テキストが用いられているため、ISO9001やISO14001などのマネジメントシステム規格とも共通項があります。近年は複数のマネジメントシステムを同時期に構築し、「統合マネジメントシステム」として同時審査を行うケースも増えています。
【出典】厚生労働省:労働安全衛生マネジメントシステム(略称OSHMS)|16ページ 【参考】(3)
ISO45001導入の際の主なメリット
ISO45001の導入には、主に以下のようなメリットがあります。
企業の信頼性が向上する
労働安全衛生において、継続的な改善を続けている企業だと認められるためです。適切な安全衛生活動を実践する会社だという証明になるので、企業評価の向上、顧客や取引先、ステークホルダーなどからの信頼性の向上につながります。
なお、建設業や土木業などの業界では、ISO45001への対応が官公庁案件入札での加点対象となる場合もあります。そのため、それら特定の分野では、直接的なビジネスチャンスの獲得にもつながるでしょう。
コスト削減が期待できる
ISO45001を導入する際に業務フローを可視化し、管理体制の改善を行うためです。無駄な業務フローなどがあった際は、適切な体制に是正していきます。継続的に改善および是正処置を実施することで、長期的なコスト削減につなげることが可能です。
リスクの低減につながる
リスクアセスメントの実施や安全対策を徹底するためです。労働災害のリスクが低減し、従業員の負傷や疾病の防止につながります。
ちなみにリスクアセスメントとは、事業場の危険性や有害性を理解し、リスク低減のための方策を決定する一連の手順のことです。労働安全衛生法において、製造業や建設業にはリスクアセスメントが努力義務だと規定されています。
従業員満足度の向上につながる
企業と従業員との間で信頼関係が構築されるためです。会社がより良い職場環境を提供することで従業員の満足度やモチベーションアップにつながります。国際標準に準拠した安全で健康的な職場づくりを推進できることがポイントです。
ISO45001の認証取得までの流れ
ISO45001を取得するための手順は主に以下の通りです。4段階のステップを踏みます。
Step1.ISO45001に沿うシステムを構築する
ISO45001の要求事項に沿った労働安全衛生マネジメントシステムを構築します。運用範囲を決め、目的や課題、方針などを決めるフェーズです。OHSMSの根幹となる労働安全衛生方針を定め、労働安全衛生目標を策定します。
方針や目標などの計画策定にあたっては、労働者や利害関係者のニーズ、作業手順においての危険源などを考慮する必要があります。またOHSMSには、トップマネジメント(社長)や管理職も含めた働く人の協議および参加が必要です。とりわけトップマネジメントは、労働安全衛生目標に向けてリーダーシップを発揮しなければなりません。
規定やマニュアルを作成する
「OHSMSの適用範囲の決定」をはじめとするISO45001の要求事項に即して、基本規定やマニュアル、手順書などを作成します。また運用後、PDCAサイクルによる継続的改善がしやすいよう、正確な記録のための現場帳票も整備しておきましょう。
ちなみにISO45001において文書化すべきとされているのは「規格が要求するもの」と「組織が必要と判断したもの」と2種類です。また文書化した情報は、働く人々がアクセスできるようにすることが求められます。
Step3. ISO45001を運用する
作成した規定やマニュアルなどに基づき、実際にOHSMSの運用を始めましょう。運用状況は現場帳票に記録し、のちの検証や改善、審査に用います。
また審査に向けて、内部監査員の力量がある複数人による内部審査、経営者によるマネジメントレビューも実施します。OHSMSの運用について、ISO45001への適合性と、労働安全衛生に関する有効性をチェックするパフォーマンス評価の取り組みです。
内部監査およびマネジメントレビューによって明らかになった問題点を是正したのち、認証機関による審査に進みます。
Step4.審査を受ける
ISO45001は、ステージ1とステージ2の2段階です。ステージ2まで合格すれば、 ISO45001認証が授与され、登録証が発行されます。
・ステージ1(第1次審査):OHSMSの構築状況、文書の内容などを審査。文書審査であることが一般的。
・ステージ2(第2次審査):実地審査でOHSMS運用の妥当性や要求事項への適合性などを評価
ISO45001認証を取得しよう!
ISO45001への対応は、自社の労働環境の安全性を高めるほか、社会的信頼性の向上やコストの削減にもつながります。メリットの多い取り組みなので、これを機会にぜひISO45001の認証取得をご検討ください。
なお、労働安全マネジメントシステムの適切な運用には、現場帳票による記録の正確性が欠かせません。紙帳票では枚数が膨大になり、管理の大変さがデメリットになる恐れもあるので、電子帳票への移行を進めるのはいかがでしょうか。
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