目次
IATF16949とは、欧米の大手自動車メーカーが部品調達の基準にする品質マネジメントの認証制度です。IATF16949への対応は、自動車部品の製造における品質保証のほか、グローバルに事業を拡大するチャンスにもなります。
今回はそんなIATF16949について、 ISO9001との違いや認証取得のためのポイントを含めて紹介します。自動車関連業界で品質管理に携わる方、品質マネジメントに興味のある方などはぜひこの記事を参考にしてください。
IATFの概要
はじめにIATFおよびIATF16949の基本事項を、ISO9001との違いも踏まえて解説します。
IATFとは?
IATFとは、「International Automotive Task Force」の略称です。日本語では「国際自動車産業特別委員会」といいます。
IATFは、世界中の顧客に対して品質のよい自動車を提供するための組織です。欧米の自動車メーカーや自動車会社、自動車産業団体によって運営されています。
IATFの構成メンバー(2024年10月現在)
- 自動車メーカー:BMW Group, Ford Motor(フォード・モーター), 浙江吉利控股集団, General Motors(ゼネラルモーターズ), IVECO Group, Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー), Mercedes-Benz(メルセデスベンツ) Group, Renault(ルノー) Group, Stellantis(ステランティス), Volkswagen(フォルクスワーゲン) Group, Volvo(ボルボ) Group
- 自動車産業団体: AIAG (アメリカ), ANFIA (イタリア), FIEV (フランス), SMMT (イギリス) , VDA (ドイツ)
IATF16949とは?
IATF16949とは、自動車業界の品質マネジメント(QMS)に関する国際規格のことです。世界各地の自動車メーカーが導入しています。自動車(乗用車や小型商用車、大型トラックなど)やそのサービス部品(交換部品やアクセサリー・追加部品など)を製造する組織が適用範囲・認証範囲に含まれます。
IATF16949は、自動車メーカー(OEM)が自動車部品を調達するときに基準としているマネジメントシステム規格です。メーカーは、生産部品やサービス部品などをIATF認証の登録業者から購入することで、自動車の品質を担保します。IATF16949に準拠して部品のサプライチェーン側が正しく品質マネジメントを実施することで、その部品を調達するOEM側の品質保証も実現されるという仕組みです。
ISO9001との違い
ISO9001との違いを明確化するならば、自動車セクターに特化したIATF16949の方が規格が厳格に定められています。
ISO9001とは、顧客満足度を高めるために用いられる品質マネジメントの国際規格です。ISO9001が用いられている業界は自動車業界だけに限りません。例えば、飲食や建設、電気などの業界でも活用されています。
IATF16949には、全業種共通のISO9001に自動車産業固有の要求事項と、顧客(自動車メーカー)ごとに独自に指定される顧客固有要求事項(CSR:Customer Specific Requirements)が追加されています。自動車産業固有の要求事項とは、製品安全や緊急事態対応計画、自動車産業の用語および定義などに関する諸規定です。顧客固有要求事項は、メーカー各社による補足的なリクエストで、より詳細な内容や要件が規定されます。
また定義したプロセスを評価する手法を指す「プロセスアプローチ」の概念においても、IATF16949はISO9001よりも厳格です。ISO9001では単にあるプロセスのアウトプットが他のプロセスへのインプットと捉えるのに対し、IATF16949ではインプットを「顧客のニーズ」、アウトプットを「満足した顧客のニーズ」と考えます。またIATF16949では、プロセスアプローチが実質必須となっており、内部監査や第二者・第三者監査においてプロセスの確認が求められます。
IATF16949導入のメリット
IATF16949を導入すれば、以下のようにさまざまなメリットが期待できます。
品質や生産性の向上につながりやすい
IATF16949は品質管理のほか、企業の生産性の向上にも配慮した内容になっています。規格が定める要求事項を満たすことで業務フローの改善が実現され、より効率的な生産が可能となります。また業務フローのは効率化は不良品や不具合を減らすことにもつながるため、コスト削減も実現可能です。
リスクを回避しやすい
不良品が発生したり、事故が起こったりするリスクを防ぎやすくなります。 IATF16949の認証を得た事業者には、第三者機関による審査が定期的に行われているためです。定期審査があることで、自社では気づけなかった課題などを見つけやすくなります。
信頼と評価を得やすい
IATF16949に準拠することで、自動車産業におけるグローバル規模での信頼を得ることが期待できます。米国、欧州、日本、韓国、各国の自動車メーカーの多くがIATF16949を重んじているからです。
IATF16949規格に適合していると認証を受けて国際標準化を実現することで、サプライヤーとしての信頼が増すことにつながります。サプライヤーとは、商品やサービスを供給する人や企業のことを指します。グローバルに顧客志向のビジネスを展開して国際競争力を強化するためにも、 IATF16949の認証登録はおすすめです。
IATF16949の認証取得までの流れ
IATF16949の認証を取得するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。とりわけ事前の準備と認証を維持するための運用が大切です。
Step1. 品質マネジメントシステムを構築する
まずはIATF16949で要求される要求事項に沿ったマネジメントシステムを構築します。第一にプロジェクトチームを結成して、品質管理責任者と品質監査責任者を選びましょう。その後、IATF16949の認証取得に向けた中長期的な計画を立案・策定するという流れです。
Step2.マネジメントシステムを運用する
構築したマネジメントシステムを、適宜記録、改善しながら運用します。 IATF16949では、品質マネジメントシステムの運用において、以下5つのコアツールが重視されます。
- PPAP(Production Part Approval Process, 生産部品承認プロセス):生産部品について顧客(自動車メーカー)から承認を得るためのルールを規定
- APQP(Advanced Product Quality Planning, 先行製品品質計画):顧客のニーズに応える新製品の開発から量産に至るまでの一連の運営規定
- FMEA(Potential Failure Mode and Effects Analysis, 故障モード影響解析):製品や製造プロセスが抱えるリスクを設計段階から評価、排除するための技法を規定
- MSA(Measurement System Analysis, 測定システム解析):測定値のばらつきを評価し、測定の正確性を担保するための方法を規定
- SPC(Statistical Process Control, 統計的工程管理):統計的手法によって製造工程を管理し、品質保証をするための方法を規定
なお、マネジメントシステムの運用後は、認証審査に向けて内部監査の実施が必要です。任命した内部監査員(Internal Auditor)の監督のもと、システムの効果や継続に関する妥当性を評価、改善します。
Step3.認証取得の審査を受ける
内部監査およびマネジメントレビューを完了したら、認証機関による登録審査を受けます。主要な認証機関には、JQA(日本品質保証機構)やSGSジャパン、ビューローベリタスジャパンなどがあります。
登録審査は、ファーストステージ審査(ステージ1)とセカンドステージ審査(ステージ2)の2段階です。
- ファーストステージ審査:主に文書審査。審査対象であるマネジメントシステムの構築状況をチェックし、ステージ2に向けた情報収集を実施。
- セカンドステージ審査:マネジメントシステムの実施状況を、規格要求事項や顧客要求事項への整合性の観点から評価。ステージ1から90日以内。
ステージ2まで合格すれば、審査機関から登録証が発行されます。登録証の有効期間は3年です。
Step4.認証維持に向けた運用を行う
IATF16949の承認取得からは、ステージ2の審査終了から約1年おきの間隔で定期審査が実施され、3回目(3年後)は更新審査となります。更新審査をパスすれば、新たに3年間有効の登録証が発行されるという仕組みです。
IATF16949の認証を保ち続けるためには、定期審査および更新審査に向けたマネジメントシステムの適切な運用が求められます。そのため、審査終了後もPDCAサイクルを回し、マネジメントシステムの継続的改善を行うことが重要です。
IATF16949認証を取得しよう!
IATF16949認証の取得は、自動車部品の品質向上や生産性向上、ひいてはグローバルな事業規模の拡大にもつながります。メリットが大きいので、これを機会にぜひ取得をご検討ください。
なお、IATF16949取得に向けた準備の一環として、現場帳票電子化システム「i-Reporter」で現場帳票のデジタル化・業務効率化を推進するのに効果的です。i-Reporterでは、お手持ちのiPadやiPhone、Windowsを使って、帳票の作成や設計、管理を電子化できます。
IATF16949に準拠するとなると、品質検査や設備点検、内部監査などの管理工数が増えると予想されます。i-Reporterを導入して紙帳票を脱却し、管理方法をスリム化しておけば、新たに管理工数が増えても少ない負担で対応が可能です。 i-Reporterの導入にご興味のある方はぜひ下記よりお問い合わせください。製品に関するオンラインセミナー・講習会もご用意しており、サポートも充実しています。
現場帳票研究所の編集部です!
当ブログは現場帳票電子化ソリューション「i-Reporter」の開発・販売を行う株式会社シムトップスが運営しております。
現場DXの推進に奮闘する皆様のお役に立てるよう、業界情報を定期的に配信致しますので、ぜひ御覧ください!