未然防止とは?再発防止との違いや基本のステップ、実施するメリット

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製造現場や職場において、突発的な設備の故障や不良品の発生、あるいはヒューマンエラーによる重大な事故といったリスクに、日々頭を悩ませていませんか? 

「トラブルが起きてから対処する」という後手後手の対応だけでは、コストがかさむだけでなく、現場の疲弊や顧客からの信頼低下を招きかねません。特に、現代の高度化された製造業において、ひとたび重大な問題が起これば、損失は計り知れません。

そこで今、多くの企業で「未然防止」という取り組みが大切視されています。これは、過去の対応を繰り返すのではなく、「未来のリスクを先回りして摘み取る」最も高度な品質・安全管理の考え方です。

本記事では、未然防止の定義や再発防止との違い、具体的な進め方を解説します。職場で未然防止を定着させ、生産性の高い製造現場を実現するためのヒントにしてみてください。

未然防止とは

未然防止とは、トラブルや事故・不具合が「起きてから対応する」のではなく、「起きる前に予測・察知」し、対策を講じて防ぐという考え方です。

多くの現場では、問題が発生した後の「火消し」に追われがちですが、未然防止は「火種そのものを作らない」あるいは「火種が小さいうちに摘み取る」活動と言えます。

品質管理(QC)や安全衛生の分野において、最も高度で理想的な管理状態を目指すものです。

未然防止と再発防止の違い

未然防止とよく混同される言葉に「再発防止」があります。両者はどちらも品質向上や安全確保に欠かせない活動ですが、着眼点とタイミングに明確な違いがあります。

 再発防止は、既に起こった問題を分析し、二度と同じ過ちを繰り返さないようにする活動です。これに対し、未然防止は「まだ起きていない」問題を対象に、将来のリスクを予測し、発生源を取り除く点が大きく異なります。

それぞれの違いを整理すると以下のようになります。

項目未然防止再発防止
意味問題やトラブルが起こる前に防ぐこと一度起きた問題が再び起こらないようにすること
目的事故・不具合・ミスなどを事前に回避する発生した問題の再発を防ぐ
タイミングトラブル発生前トラブル発生後
対応の主な内容リスクの洗い出し、予防策の策定、手順の明確化原因分析、対策の実施、再発防止策の検証
考え方の方向性「なぜ起こるか」を予測して対策「なぜ起こったか」を分析して対策
具体例・チェックリストを作成してミスを未然に防ぐ・ミス発生後に原因を特定し、手順書を修正
・設備の定期点検や予知保全を行う・同様の不具合を防ぐために教育を実施

再発防止が「過去の事象」に基づく対処療法であるのに対し、未然防止は「未来の予測」に基づく予防療法と言えるでしょう。

未然防止の基本3ステップ

未然防止はいきなり実現できるものではありません。一般的に、トラブル対応の成熟度に応じて「緊急対応→再発防止→未然防止」の3段階で進めることが推奨されています。

Step1. 緊急対応

 トラブルが発生した直後に、被害の拡大を防ぐための初期対応です。火事でいえば、まずは目の前の「火を消す」行動にあたります。発生状況を正確に把握し、製品の流出を止める、ラインを停止するなどして、被害を最小限にとどめるのが目的となります。

Step2. 再発防止

火が消えた後、なぜ出火したのかという「火元」を探るフェーズです。なぜなぜ分析や他手法などを用いて、トラブルの根本原因を追求しましょう。

同じ要因で同様の問題を起こさないよう対策を講じることが大切です。分析の段階で得られた知見(再発防止策)やデータは、次の未然防止を行うための重要な基礎データとなります。

Step3. 未然防止

過去の再発防止結果やヒヤリハット情報を活用し、将来起こりうる「類似リスク」を予測・想定して、新たなトラブルを未然に防ぎます。作業工程や仕組みの見直し、教育訓練の徹底、ポカヨケ(ミス防止装置)の導入などを組み合わせて、リスクを先回りして封じ込めます。

未然防止策を実施するメリット

未然防止策の導入は、単にトラブルを減らすだけでなく、経営的な観点からも多くのメリットをもたらします。ここでは主な3つの利点について解説します。

リスクを未然に防ぎ、企業価値を守る

リコールや重大事故は、コスト増大や企業イメージの低下など計り知れない損失を招きます。未然防止策で事故の芽を摘むのは、こうした致命的リスクを回避し、顧客からの信頼維持に直結します。

安定した品質と安全を提供し続けることは、結果としてブランド価値や社会的信用の向上にもつながるのです。

ムダを削減し、生産性を向上させる

「1件のトラブル」対応には、原因調査や修正など多大な時間とコストがかかります。未然防止を仕組み化すれば、こうした「後処理」のムダを大幅に削減可能です。 

緊急対応を減らし、従業員が本来注力すべき生産業務や改善活動に集中できる環境を整えることで、生産性と業務品質の向上が期待できます。

例えば、製造現場で未然防止に取り組んだ事例では、緊急ライン停止が減り、年間数百時間のムダな残業を削減できたケースもあります。

従業員の主体性を高める

未然防止は指示待ちではなく、現場の「小さな変化」への気づきが起点です。自ら課題を発見し改善する取り組みは、従業員の主体性を育て、現場の問題解決力を高めます。

組織全体に「自ら考え行動する」文化が定着すれば、製造工程や業務プロセスの継続的な改善にも大きくつながっていきます。

未然防止策を実施するうえでの課題

理想的な活動である未然防止ですが、実際に定着させるにはいくつかのハードルがあります。なぜ多くの企業で未然防止が進まないのか、課題を見ていきましょう。

未然防止策の重要性が理解されていない

多くの企業では、依然としてトラブル後の「事後保全」が一般的です。未然防止の成果は「何も起きないこと」であり、効果が見えにくく評価されにくい傾向があります。

そのため、目に見える成果が出る業務よりも緊急性が低いと判断され、日々の忙しさの中で後回しにされがちなのが実情です。

指導者や管理・推進体制が不足している

効果的な未然防止にはFMEAなどの専門知識が必要ですが、指導できる人材の不足が課題です。また、ベテランの勘に頼る「属人化」も深刻で、異動により取り組みが途切れる場合もあります。

過去のトラブル情報が共有されていないと、担当者が変わるたびに同じミスを繰り返す原因となります。

現場で未然防止を進める手順

では、実際に製造業の現場で未然防止を進めるにはどうすればよいのでしょうか。効果的なのは、PDCAサイクルを回しながら段階的にアプローチすることです。また、問題解決の手法として「QCストーリー」の活用も効果的です。

ここでは、基本的な5つのステップを紹介します。

Step1. 現状把握と計画を立案する

まずは現状把握から始めます。これまでに発生した不良品のデータ、ヒヤリハット報告、顧客からのクレーム内容などをすべて確認し、発生状況を整理しましょう。

 データに基づいて「どの工程で問題が起こりやすいか」「どのような要因(人、設備、材料、方法)が絡んでいるか」を洗い出し、作業内容・設備・手順を徹底的に見直します。 

データや現場のリアルな声を活かして再発防止策を固め、応用して未然防止策を検討することが重要です。現状把握ができたら、具体的な目標(例:不良率〇%減、設備停止ゼロなど)を設定し、達成に向けた計画を立てましょう。

Step2. 優先順位と実施時期を計画する

洗い出したリスクすべてに同時に対処するのは不可能です。影響の大きい不具合やリスクを洗い出し、重要度(被害の大きさ)と発生頻度に応じて優先順位を決めます。

  • 重要度 高 × 発生頻度 高:最優先で取り組むべき課題
  • 重要度 高 × 発生頻度 低:重大事故につながるため、確実な対策が必要

このように、短期で取り組む内容と中長期で改善すべき項目を分け、対策の実施時期を計画します。危険性が高く、発生頻度の多い項目は、リソースを集中させて優先的に未然防止策へ取り組みましょう。

Step3. 実施と情報共有を行う

決定した対策を職場で実行に移します。ここで重要なのは、一部の人だけでなくチーム全体で共有することです。 結果や現場からの意見、改善内容をチーム内はもちろん、関係部門や他部署へも共有します。

朝礼での指導やミーティングなどを通じて、「どこが異常に気づくポイントか」「正しい手順は何か」を共有し、誰もが同じ基準で対応できるようにするのが、組織的な未然防止の鍵となります。

Step4. 効果を確認する

対策を実施した後は、必ず効果検証を行います。不良率の推移、設備の稼働停止件数、作業時間の変化など、定量的なデータで実施後の成果を確認してください。

結果が思うように出ていない場合は、対策が的外れだったか、徹底されていない可能性があります。再度原因を見直し、追加の対策を検討しましょう。

また、未然防止の効果はすぐに現れない場合もあるため、月単位などで長期的に推移を確認する姿勢も必要です。

Step5. 改善内容を定着・標準化させる

効果が確認された対策は、一過性のもので終わらせてはいけません。手順書やマニュアル、製造標準書に反映し、日々の業務プロセスへ正式に組み込みます。これを「標準化」と呼びます。

更新内容は速やかに関係者に共有し、教育訓練を行うことで、現場全体で継続的に改善を進められる体制を整えます。

未然防止の実現には「現場帳票の電子化」による情報活用が鍵

未然防止の定着には、日々のヒヤリハットや不具合情報を記録・共有し、改善につなげる仕組みが不可欠です。しかし、多くの現場では「紙の帳票」管理が壁となり、情報の分散や集計の遅れを招いています。

その結果、過去の記録を有効活用できず、取り組みが継続しにくいのが実情です。現場帳票の電子化ツール「i-Reporter(アイレポーター)」なら、日々の点検・作業報告をタブレットやスマホでデジタル化することができます。リアルタイムでのデータの共有・蓄積が可能になります。

  • 情報の可視化
  • ナレッジの共有
  • 入力ミスの防止

現場で得た情報を「死蔵」させず、リスクを早期に察知する「活きた資産」に変えることで、「起こる前に防ぐ」体制を仕組みとして実現できます。

未然防止の第一歩として、まずは情報の記録と共有のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。

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