統計的品質管理(SQC)とは?代表的な手法やメリット・デメリット

統計的品質管理(SQC)とは、データ分析をはじめとする統計的方法によって、製品やプロセスの品質管理を効率化する手法です。品質の一貫性と製造プロセスを改善し、製品の安定性や信頼性を高める方法として活用されています。

今回はそんな統計的品質管理(SQC)について、概要や具体的な手法、メリット・デメリットなどを解説します。製造業やサービス業界で品質管理に携わる方、なかでも統計的手法を用いた品質改善に興味のある方はぜひ参考にしてください。

統計的品質管理(SQC)の概要と測定方法

以下では、統計的品質管理(SQC)の定義や測定方法の基本について解説します。

統計的品質管理とは

統計的品質管理とは、製造プロセスや製品の品質を、統計的手法を用いて管理や改善をする手法の総称です。「Statistical Quality Control」を略してSQCとも呼ばれます。1931年にウォルター・A・シューハートが統計学を元に提唱した管理図が始まりとされています。

SQCは1940年代にアメリカで発展し、GHQの占領下で日本に導入されました。特に統計学者のデミング博士が日科技連で開催した品質管理講習会が大きな影響を与えました。その後SQCは、1960年代以降に、企業全体で品質管理を行う「TQC(総合的品質管理)」、「TQM(総合的品質マネジメント)」に発展しました。

統計的品質管理の測定方法

全製品を測定せず、サンプルデータを用いて全体の品質を推定するのが、統計的品質管理の測定方法です。把握した内容をもとに、製造工程の改善や問題解決を図ります。

少数のサンプルから信頼度の高い情報を得るためには、目的に応じた統計的品質管理の手法を用いる必要があります。どのような手法を用いるかについては次項の内容を参考にしてください。

統計的品質管理の代表的な手法

統計的品質管理(SQC)には、具体的に以下のような手法があります。

検定と推定

検定と推定は、サンプルデータから母集団の特性を推定する手法です。母集団の特性を一つの数値でピンポイントに推定する「点推定」と、母集団の特性がある範囲内にあると推定する「区間推定」という方法がよく用いられます。

例えば、ある製品の不良率は10%であると推定するのが点推定、95%の確率で8〜12%であるといったように推定するのが区間推定です。

分散分析

分散分析は、複数のグループ間の平均値に差があるかどうかを検定する手法です。材料A、材料B、材料Cなどのように、3つ以上の対象を比較するのに用いられます。

分散分析は、製造条件や材料の違いが製品の品質に影響を与えるかどうかを分析するのに便利です。品質に影響を与える要因を特定し、改善につなげられます。なお、製造条件と材料の組み合わせのように、2つの要因の効果と交互作用の有無を検定することも可能です。要因が2つの分散分析を、「二元配置分散分析」といいます。

実験計画法

実験計画法は、効率的な実験方法によって、複数の要因が結果に与える影響を要領よく分析する手法です。統計的方法を用いてあらかじめ因子の数を絞り込むなどすることで試行回数を減らし、効率的な検証を可能にします。

実験計画法は、製品やプロセスの最適な設計条件を見つけること、品質問題の原因を特定することなどに便利です。少ない試行回数で効率的な品質改善を実現する効果が期待されます。

相関分析・回帰分析

相関分析・回帰分析は、どちらも複数の変数間の関係性を分析する手法です。相関分析は変数間の関連性の強さを調べる手法、回帰分析は変数間の関係性を数式によってモデル化し、予測に役立てる手法を指します。

相関・回帰分析の目的は、品質に影響を与える要因を特定し、予測モデルを作成することです。品質問題の発生を予測し、未然に防ぐ効果が期待されます。

多変量解析

多変量解析は、複数の変数が発生したデータを同時に分析し、変数間の関係性を明らかにする技法です。複数の要因が品質に与える影響を総合的に分析することを目的に用いられます。

複雑な多変数のデータ分析を行う多変量解析では、前処理として「一変量解析」や「二変量解析」でデータ整理を行います。一変量解析には、ヒストグラムや箱ひげ図、二変量解析には散布図(分布図)などを用います。

また、多変量解析は特定の1つの分析手法を指す用語ではなく、例えば、「重回帰分析」や「判別分析」なども多変量解析の一種です。

タグチメソッド(品質工学)

タグチメソッド(品質工学)は、新製品のロバスト性(安定性)を、開発設計の段階から確保しておくための手法です。生産環境や使用条件などのノイズがあったとしても、製品の機能性が損なわれないかどうかを評価します。

タグチメソッド(品質工学)と一般的なQC(品質管理)の違いは、ノイズへの対応方法にあります。QCでもノイズの管理は重要視されますが、 タグチメソッドでは設計段階からより積極的にノイズについて考慮し、ノイズがあっても品質が低下しないロバスト設計を行います。タグチメソッドは、製品やプロセスがノイズの影響を受けにくいよう設計することに焦点を当てた手法です。

管理図法

管理図法とは、過去のデータに基づく正常と異常の境界値をグラフに示し、得られたデータが正常か異常かを判断するというシンプルな手法です。水平に上部管理限界線と下部管理限界線を引き、各限界線から上下にはみ出た部分を異常とみなす形式が一般的に用いられています。

とても単純な方法ですが、品質管理の分野・業界では、有用性が古くから経験的に示されています。

抜取検査法

抜取検査法は、ロット(製品のまとまり)からサンプルを抽出し、ロット全体の品質を判定する手法です。「抜き取り検査」と表記することもあります。

抜取検査は、全数検査の代わりに、効率的に品質を検査することを目的に用いられます。また検査によって製品が壊れてしまう場合にも、全数検査の代替手法として有効です。抜取検査には、検査コストを削減し、効率的に品質管理を行えるメリットがあります。

統計的品質管理のメリットとデメリット

統計的品質管理には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

統計的品質管理のメリット

統計的品質管理のメリットは、製品のばらつきを抑え、均一な品質を保ちやすい点です。データ分析の結果を工程管理に反映することで、均一な品質の製品を効率的に大量生産することが可能になります。

またデータ解析によって生産工程の実態を細かく把握できるという点も魅力です。統計的な分析に基づいて生産工程の問題点を特定し、改善することができます。

統計的品質管理のデメリット

一方、デメリットは統計的品質管理の導入によって務負荷が増加する可能性があることトです。具体的には、データ収集や解析に時間と労力がかかることが考えられます。

また専門性が高い内容であることから、統計的品質管理には属人化のリスクもあります。実施には統計の専門知識やスキルが必要なため、特定の人に依存しやすくなるリスクは比較的高いといえるでしょう。社員がセミナーなどでスキルを習得する場合、相応のコストもかかります。

統計的品質管理を導入してみよう!

統計的品質管理(SQC)を適切に実施すれば、品質管理の精度や効率性を高められます。業務の負担増や属人化などの懸念はありますが、まずは無理のない範囲で試験的に導入してみてはいかがでしょうか。

昨今はデータ収集や解析の作業を効率化するITツールも数多く提供されています。上手にデジタル化すれば、人手の少ない企業、専門性に乏しい企業でも、より良い統計的品質管理を実現できるはずです。これを機会にぜひ、統計的手法を用いた品質管理の効率化にぜひチャレンジしてみてください。

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