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「お客様により近いところへ―」
モノづくりの現場に今なお残る紙の帳票。システムの導入が図られようとも、そのデータの入力は人によるアナログ方式(手入力)というのが日本でもタイでも少なくない製造業の実情である。作業をしながら記録をデジタルで行うことが難しい製造現場の実情において、何とか改善ができないかと開発されたのが、株式会社シムトップス(本社・東京:CIMTOPS Corporation.)が提供する電子帳票化ソフトウェア「i-Reporter」だ。操作性や機能性に優れ、これまでに世界で約4000社が採用。タイでも現地販売代理店を通じて提供を続けてきた。そのタイで今年10月、念願の現地駐在員事務所が開設。新たな体制がスタートした。
「お客様により近いところへ―」。初代事務所長の沼田欧行氏とグローバルセールス&マーケティンググループ統括責任者の生出さやか氏のお二人にお話を伺った。
■創業から34年目の同じ日に
シムトップス社は1991年10月1日に創業。シンガポール開発拠点に続いて営業支援を中心に行うタイ駐在事務所は、会社設立から34年目のちょうど同じ日に誕生した。事務所長の沼田欧行氏はITセールスのスペシャリスト。これまでシンガポールで6年、タイで2年、SaaS系ソフトウェア企業に勤務した経験の持ち主である。その経歴に白羽の矢が立ち、初代事務所長を務めることになった。
現場記録、データ収集に定評があるi-Reporterだが、現地代理店が顧客に対し提案・販売を行い、技術サポートにおいては現地スタッフがタイ語で顧客のタイ人に向けて実施できる様に代理店強化に尽力してきた。3か月に1度の割合で日本本社から出張ベースで体制強化を実施してきたものの、時間や言葉などの制約からサポートには一定の限界が生じてしまっていた。それが常々、悩ましい課題として存在し続けてきた。
同様の帳票電子化ソフトウェアは日本国内でもいくつかの会社が販売していたものの、言葉の壁やサービスの限界から海外進出を躊躇し、諦める企業が少なくなかった。そうした中でもシムトップス社が海外展開にこだわったのは、モノづくりが国境を超えてグローバル化しているから。人件費が高騰し、国によっては少子化など労働者の確保が難しくなっているから。世界の製造現場の課題を解決し、製造業の発展に役に立つ企業でありたい、という強い思いがあったからだ。
■駐在員事務所の開設は意義がある
「それだけにタイ駐在員事務所の開設は、当社のみならず世界のモノづくりにおいて非常に意義がある」と沼田氏。販売代理店やユーザーのすぐ近くに、開発メーカー自らが存在することで、「伝えられる信頼感や安心感も大きく違ってくる」と力説する。
現地に拠点を構えることで、代理店パートナー企業とは日々、フェース・トゥー・フェースでのスキル伝達が可能となり、エンドユーザーへの訪問にも同行することで、タイのモノづくりに潜む仔細なニーズや困り事をタイムリーに把握することができる。出張ベースとは異なるさまざまな効果が期待できるはずだ。
もちろん、ゆくゆくはタイで現地法人化し事業を拡大することが目標だ。沼田氏も「そこまで持っていく事が私に課せられたミッション」と静かに明かす。タイ拠点がより強固となれば、近隣のベトナムやインドネシアなど人口増で成長を続ける新興諸国への横展開も可能となる。2011年に設立した中国・上海の現地法人やシンガポールにある開発拠点とも連携しながら、さらなる海外進出を図るとしている。
ベトナムやインドネシアなど近隣市場にはすでに現地代理店が置かれ、i-Reporterの販売も順調に拡大し始めている。「これらの国々と地理的に近い場所にいることで、現地のパートナー企業の人たちも安心してくれる。好影響は計り知れない」と沼田氏。タイを中心に東南アジアから南アジアまで。それがシムトップス社の描く未来図だ。
■現場の使い勝手を最優先に開発
シムトップス社の製品がタイの製造業に流通し始めたのは2016年のこと。当時から現場の紙記録に対する課題は顕著であり、生産性と品質の向上が要求されるようになっていた。そこで真っ先に受け入れられたのがi-Reporter。グローバル戦略の統括責任者である日本本社の生出さやか氏は当時のことをよく覚えている。「タイでも政府主導のインダストリー4.0が進むなどモノづくりの在り方が現場から変わろうとしている時だった」
i-Reporterは特別な知識がなくても、自由にカスタマイズできる高い操作性が好評価を得た。「現場の使い勝手を最優先に開発を進めてきたから」と生出氏は解説する。「単なるIT企業ではない、現場で本当に活用できるソリューションメーカーとしての地位」。それが、生出氏らが目指す自社の立ち位置だ。
すでに、東南アジアのほかインド、韓国、台湾などのアジア諸国・地域、ヨルダン、アラブ首長国連邦などの中東地域、そして、米国、メキシコなどの北米地域の計16か国でi-Reporterは導入済だ。タイ駐在員事務所の開設を契機に、今後順次、拡大していく戦略を取る。
「11月に出展するDigiTech ASEAN Thailandは、バンコクで開催されるデジタルテクノロジーの総合展示会。現場の記録のデジタル化がどれほどの業務改善を生むかを伝えていきたい」と生出氏。導入のきっかけ・決め手となるような目に見えるソリューションの提示も行っていくという。シムトップス社の「タイ第2幕」が始まろうとしている。
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