
SWCC株式会社

紙の不適合票を引き出しに置き、職長→課長→スタッフの順で回覧する運用だったため、月半ばに起きた不適合も、口頭で伝わらなければ月末まで誰も気づけない状態だった。出張やテレワーク中は紙の記録ができず、帰社後にまとめて転記する作業も発生していた。
カイゼン効果!
紙帳票をi-Reporterに置き換えたことで、出張先やテレワーク中でも入力・確認が可能になり、現場の状況や情報をその場で共有できる体制を構築した。
通信事業部のe-Ribbon®が生成AI普及によるデータセンター需要の急増で受注が急拡大し、検査成績書作成作業が爆発的に増加し2025年には平時の10倍、現在は15倍まで増加。週15時間の転記作業が発生し、時間外労働や他部門からの応援でしのぐ状況が続いていた。
カイゼン効果!
2025年7月の電子化指示から10月の本格稼働まで、わずか3ヶ月で紙から電子への切り替えを完了。転記・集計作業の削減により月64時間の効果を実現した。検査帳票数は増加し続けており、2026年7月時点で再計算すると、月96時間まで上振れする。
i-Reporter導入初期はボトムアップの活動で、拠点をまたぐと交流が限られ、類似業務でも帳票フォーマットがバラバラという状況が頻繁にあった。競合製品を導入しようとする動きもあり、ツールの乱立によるリソース効率の悪化が懸念されていた。
カイゼン効果!
2023年に本社主導でオンプレミス化を実施し、ライセンスを部門横断で共有する体制へ移行。現在は20部門以上で活用され、全社で年間効果が出ており投資回収も完了している。紙削減枚数は月平均6,000枚以上、年間約7万枚に達する。

2035ファクトリーPJ DX推進グループ長 兼 デジタルイノベーション推進室 岩城 理美 氏

製品品質保証部 仙台品質保証課 通信グループ 主任 井上 健一 氏

製品品質保証部 仙台品質保証課 通信グループ 大宮博幸 氏
生成AIの普及でデータセンター需要が急増し、SWCC株式会社が仙台で製造するe-Ribbon®への注文が殺到した。事業としては追い風だが、検査の一部システム化が遅れ紙帳票での対応を余儀なくされ、転記が追いつかず現場の負担は膨らむ一方だった。
同社はこの局面を、わずか3ヶ月の帳票電子化で乗り切った。支えになったのは、2020年から蓄積してきたi-Reporterのノウハウである。

SWCCは神奈川県川崎市に本社を置く総合電線メーカーだ。1936年創業、今年で90周年。「2035ファクトリープロジェクト」のもと、労働力減少を見据えて生産性向上とデジタル化を全社で進めている。紙帳票の転記など付加価値の低い作業に時間を使えない、という危機感が全社DXの根っこにある。
取り組みを牽引した2035ファクトリーPJ DX推進グループ長 兼 デジタルイノベーション推進室の岩城理美氏、そして現場で電子化を推進した製品品質保証部 仙台品質保証課 通信グループの井上健一氏(主任)・大宮博幸氏に話を聞いた。

SWCCの事業は、エネルギー・インフラ事業と通信・コンポーネンツ事業の2本柱で構成される。前者は高電圧電力ケーブル用コネクタSICONEX®をはじめ、電力インフラを支えるケーブル・機器部品。後者は生成AIデータセンター向けのe-Ribbon®や高速・大容量通信のLAN用ケーブルFLANTEC®、車載向け通信ケーブルなど。いずれも社会インフラを支える製品群だ。
相模原事業所で製造するSICONEX®は、革新的な絶縁技術を用いた環境配慮型・コンパクトな高電圧電力ケーブル用コネクタで、環境性・耐震性・施工性を差別化の軸に変電所・発電所などの電力インフラを支える。受注は数年先まで埋まっている。
そして仙台事業所のe-Ribbon®は、8心・12心に加え16心タイプも展開する超多心細径高密度ケーブルで、データセンター内の限られた空間における高密度配線と省スペースを同時に満たす製品である。2025年第3四半期に本格販売を開始すると、海外からの引き合いが一気に増えた。

事業の成長と裏腹にその裏側では悲鳴が上がっていた。
話は2019年、仙台事業所のアルミ線製造課までさかのぼる。
「電子化の検討は2019年から開始し、2020年1月にクラウド版i-Reporterを導入しました。きっかけは、仙台事業所のアルミ線製造課で発生していた紙帳票とExcel転記の負荷です」(岩城氏)

当時、製造課の記録はほぼすべて紙だった。職長やスタッフが月次でExcelに転記し、集計する。転記に時間がかかること自体も問題だった。だが本当の問題は、そこではなかった。
「不適合情報は紙の不適合票を引き出しに置き、職長→課長→スタッフの順で回覧する運用でした。集計・分析や対策会議は翌月の月初めとなるため月半ばに起きた不適合も、口頭で伝わらなければ月末まで誰も気づけない。紙で回る運用には限界がありました」(岩城氏)

岩城氏自身の働き方も、限界を後押しした。アルミ線部門と本社のデジタル化部門を兼任して出張が増え、コロナ禍でテレワークが本格化すると、紙ベースのルーティン作業は出先でこなせない。帰社後にまとめて転記しなければならず、多くの時間が取られていた。現場で起きていることをいち早く把握したい。出張先からもデータを確認して場所にとらわれない働き方を実現したい。その思いが、仙台事業所での帳票電子化の出発点になった。
もう一つ、岩城氏には譲れない考えがあった。「現場リーダーは熟練者が多く、本来、設備を動かし若手技能者への技能継承、後輩を育てることができる人材です。それだけできる人に、誰でもできる転記作業をさせるべきではないと感じていました」。少子化で労働人口は減っていく。付加価値のない作業から人を解放すること。電子化は手段であって、これが目的だった。
では、なぜi-Reporterだったのか。
2020年の検討時、同社は競合製品を含む複数ツールのトライアルを実施している。絞り込みの軸は、社内のExcel文化との親和性だった。Excelベースで帳票を作れること。現場でタブレット入力ができて使いやすいこと。そして、帳票作成が属人化しないこと。
「マクロを作れる人を育て、スクリプトを引き継ぐのは非常に難しいと、私自身も異動のたびに何度も経験していました」(岩城氏)
最終的な決め手は2点。
①ConMas IoTなどオプションによる将来的な拡張性
②国内製造業での導入実績の豊富さ
である。
稟議は、担当工場のみの導入から始めた。現場帳票システムの費用に、Wi-Fi整備費用とタブレット費用をまとめた投資計画。社内にSIMカードなしのiPad運用実績はなく、本社とWi-Fiモデルの運用ルールを一から整備するところからのスタートだった。それでも1工場でうまくいくと、仙台事業所内の他工場から「うちも」という声が上がる。アルミ線製造課では1ラインずつ約1ヶ月の並行期間を設け、2年かけて18ラインへ展開した。点検表から日報まで、ほぼすべての紙情報をデジタル化したこの経験が、のちの横展開の基盤になる。
横展開は、順風満帆に進んだわけではない。
拠点をまたぐと交流は限られる。類似業務なのに帳票フォーマットはバラバラ。導入初期はボトムアップの活動だったから、拠点ごとにツールが乱立し、競合製品を導入しようとする動きさえあった。習熟したツールが異動先で使えないなら、社員のスキルは拠点を出た瞬間に消える。このままではスケールしない。
流れを変えたのは、最初に導入したアルミ線製造課で日報・点検表・在庫管理まで一式の社内事例を作れていたことだ。比較資料を丁寧に作り込み、選定理由や導入実績など譲れないポイントを示して各拠点を説得した。2023年、本社の意向もありオンプレミス化を実施。サーバーを本社に集約し、ライセンスを部門横断で共有する形にした段階で、製造現場の電子帳票はほぼ全社でi-Reporterに統一された。
「ツールを拠点・部門ごとにバラバラにすると、習熟しても異動先で別ツールを覚え直すことになり、スケールしません。データが社内に点在してサイロ化し使いにくくなるという問題もあります。過去5年ほどは、製造現場の帳票についてはi-ReporterとMotionBoardで統一する方針をベースとして推進しています」(岩城氏)
帳票定義タイトルに3文字コードを付与し、自動出力された帳票を部門ごとのフォルダへ振り分けるプログラムも開発した。三重事業所などでの成果報告をきっかけに「うちも」という部門はさらに増え、現在は20部門以上で稼働している。
現場の抵抗がなかったわけではない。何十年も紙でやってきた職人気質の現場である。従来の日報レイアウトをなるべく残し、1ヶ月の試用期間中は現場に修正依頼用の「帳票レイアウトを印刷した紙」を置いて、要望があれば赤ペンで書き入れてもらう。桁数が足りない、文字が小さいなど。一つずつ反映して、紙から切り替えた。
現場作業者にカイゼンに前向きになってもらうために、「この作業がデジタル化できると、○時間削減でき、○円の効果になるよ、と説明しました。改善意識の高い現場ほど、腹落ちしてくれます」(岩城氏)
社内認知を一段引き上げたのは、SWCC VQ(Value Quest)活動の成果発表会だ。半期に1回、各拠点の予選を勝ち抜いたチームが全社大会に登壇する。昨年度は三重事業所の設備点検表のi-Reporter化が優秀賞を受賞した。白黒チェックリストをカラー図表付きの電子点検表に刷新し、点検時間は月当たり43%の短縮。今年度5月の大会にも、三重製造部門の日報転記レス化が出場した。大会の様子は会場やWeb配信で見ることができ、「うちもやりたい」が広がっていく。
「上からの指示より、他現場がうまくいっているという事実のほうが入りやすいと感じています」(岩城氏)
2026年4月には、属人化への危機感から2035ファクトリープロジェクト内にDX推進グループが発足した。グループ長は岩城氏。メンバー9名は7拠点より選出され、各事業部門と兼任で動く。半分はi-Reporter経験者、残りはノーコード経験者や製造キーマン。各メンバーが自部門の改善テーマを1つ持ち、それをモデルケースに横展開・縦展開を進める体制だ。目指す姿はこう定義されている。「必要なデータが自動的に集まる仕組みをあたりまえにし、人手不足の克服・迅速な意思決定で価値を生み出し続ける組織」だ。
急増の原因は、e-Ribbon®である。生成AIの普及でデータセンターの建設・増強が世界的に加速し、高密度配線を実現するe-Ribbon®への引き合いが一気に膨らんだ。そして製品が売れれば、その分だけ検査があり、検査成績書が発行される。需要拡大の波は、そのまま紙の枚数となって仙台の検査現場に押し寄せた。
「受注増加以前と比較して検査成績書は、2025年に入ってからは当時の10倍近くに増加し、現在は15倍の枚数まで達しています」(井上氏)

1年半でおよそ15倍である。紙のままなら保管場所が尽きる。それ以前に、週約15時間の転記作業がすでに現場の限界を超えていた。時間外労働と他部門からの応援でしのぐ日々。毎週決まった出荷日があり、製造から検査までは2〜3日しかない。1日の遅れが、そのまま出荷の遅れになる。検査工程がボトルネックになれば、受注そのものを断ることになりかねない状況だった。
「2025年7月に電子化の指示があり、準備にかけられる時間も限られている中で10月から現場で本格稼働しました」(井上氏)
課題が山積の中でゴーサインが下り、立ち上げの時間はない。そこに岩城氏からi-Reporterでの対応が呼びかけられた。結果だけ先に言えば、切り替えは3ヶ月で完了した。通常の社内の標準システムの改修なら半年〜1年かかりかねない作業である。何がそれを可能にしたのか。
現在、仙台品質保証課の検査帳票(検査日報)は4種類の帳票定義で運用され、製品の品名・品番ごとにカスタムメニューから選択して入力を開始する。全社のなかでも、通信事業部の検査帳票は枚数的に最大級のボリュームだ。

紙の検査帳票と、電子化後の検査日報画面。並べると変化は一目瞭然である。



3ヶ月の中身は、意外なほど教科書どおりである。
1ヶ月目は課題の共有と要件の洗い出し、ゴール設定。最終的にどんな情報を出力・可視化する必要があるかを確認し、実装に必要なデータ項目を検討した。あわせて紙帳票の問題点を洗い出し、標準化の方針を決定。帳票定義の初版を作り、ネットワーク設定(入力順制御)を現場の意見を集約しながら設定した。
2ヶ月目はテスト運用と修正の反復。改善サイクルを数回まわし、帳票をブラッシュアップした。ここで重視したのは、触ってもらう人数である。1人や2人ではなく、さまざまな担当者に一通り操作してもらい、要望を上げてもらった。
3ヶ月目は紙との並行稼働。最初の1週間は現場の習熟に時間を取られたが、残り2〜3週間でデータを取り、事務所側で集計結果を早期に提示して、切り替えの可否を判断した。
「『いつまで並行するか』の期限を決めたことで、現場の納得感が得られました」(井上氏)
並行期間中は紙とタブレットの二重入力になる。負担は大きい。それでもデータ管理の重要性を考えれば、避けられないステップだった。そして半年を3ヶ月に縮めた種明かしは、岩城氏の側にある。帳票作成の手順、データ出力の形式、ネットワーク設定の勘所。2020年から積み上がっていたノウハウが、そのまま初速につながった。
この3ヶ月には、単なる「紙の置き換え」に収まらない工程が挟まっている。作業手順そのものの標準化だ。
発端は現場の一言だった。紙帳票をそのままi-Reporterに移植した案を提示したところ、2人作業の工程で「ここを入力したら次はこちらに飛ぶべきでは」という声が上がった。掘り下げてみると、紙帳票の問題が次々に出てくる。
つまり、紙の時代から手順はばらついていた。ただ、紙は何も言わないから、ばらつきが見えなかっただけである。
「現場担当者同士で測定の順番を話し合い、『この流れなら全員が納得できる』という合意を取りました。上から順番を指定したのではなく、現場から『この順番でお願いします』という形です」(井上氏)
現場の暗黙知を形式知化し帳票という形で実装した。電子帳票では入力順が固定される。紙時代の「右から書く」「左から書く」という個人差を、統一する好機と捉えた。ネットワーク設定で入力順を制御し、必須チェックは2人目に設定する。1人目は途中保存のため必須チェックをかけられない。だから2人目の保存時に、前工程の抜けを検知する設計である。
この標準化は、思わぬところで効いた。
「入力順が矢印どおりに固定されているため、『次はこれをやってください』と教えやすく、教える側の負担も減りました。教える人によって手順が変わることもなくなり、作業のばらつきが抑えられています」(大宮氏)

紙の時代は、教える人によって手順が違ったため、内心疑問を持ちながら従う人もいたが、そのばらつきごと消えた。
需要急増で派遣スタッフが増え、いまや紙帳票を知らない人が多数派だ。
検査ライン1台につきタブレット1台。入力は作業台で行う。2人作業の検査工程では、1人目が工程を完了するとQRコードをレシートプリンターで出力し、検品に貼り付ける。2人目がそれを読み取ると、1人目の途中データが引き継がれる。紙の時代は紙とサンプルを一緒に手渡していた。

ロットNo.はバーコード入力で、手入力も転記ミスもない。外れ値は自動判定され、規格外は画面上ですぐ分かる。

編集開始時刻と保存時刻からリードタイムを自動取得し、事務所側でMotionBoardを使って集計できる仕組みも入れている。
写真添付も活用している。判定時点の状態を写真で残せば、IDに紐づけて「その時点で問題がなかったこと」を後から証明できる。紙の時代は、確認のために現物を工程に滞留させるしかなかった。いまは事務所が現物を取りに行く必要もなく、滞留そのものが減った。

もう一つ、乗り越えるべき壁があった。客先向け検査データの改ざん不可要件である。社内標準では品質保証システムへの入力が原則。だが通信事業部の物量では、同システムへの入力は現実的でない。本社に掛け合い、i-Reporterはクラスターごとのタイムスタンプが取れ、改ざんもできないため要件を満たせると説明して、代替運用として認められた。将来的には外部連携APIで品質保証システム側とつなぐことも視野に入れている。
出荷業務の変化は、Before側を知ると効果が分かる
パレットには24箱の製品が載るが、どのパレットに何を載せたかの管理は、従来2枚綴りのシール台紙で行っていた。事務所の担当者が紙を回収し、一点ずつバーコードを読み取り、Excelの出荷管理表を作る。シールにはバーコードが2つあるため、誤読を防ごうと片方を手で隠しながら読む。紙の回収のために、現場と事務所を一日に何度も往復する。

i-Repo Scan導入後は、パレット番号と製品番号を一括スキャンで紐付ける。バーコードの先頭文字などで読取り対象を制御し、重複チェックで二重登録も防ぐ。紐付けが完了した時点で出荷情報は確定し、MotionBoard側では引き算で在庫残まで可視化される。現場で完了した瞬間、事務所への紙回収も、Excelでの手作業読取りも、仕事として存在しなくなった。


紙の時代、「今日何本出たか」と聞かれたら、そこから紙の帳票を数え始めるしかなかった。大量の転記に追われ、分析の頻度には限界がある。目の前のお客様対応が優先され、集計は後回し。ExcelやCSVのデータをExcelに転記する「バケツリレー」か、Excelマクロでの集計が主流で、保守は属人化し、工数もスキルもばらついていた。
そこで、ウイングアーク1st社の「MotionBoard」を導入。いまはi-ReporterとMotionBoardの連携機能でリアルタイムに情報を取得し、管理図・パレート図の描画、進捗状況・歩留まりのモニタリングまでを行う。

現場の休憩所にはモニターを設置し、当日の生産進捗や不良件数を表示している。入力すれば自動的にMotionBoardに反映される。自分の入力が画面に出る。それ自体が、入力のモチベーションになっている。

可視化の効果は、対応の速さに直結した。紙を回収し、転記し、関係者に届くまでのタイムラグが消えたことで、工程途中の不良やトレンドの変化にその場で気づける。新しい製造ラインの立ち上げ時に特性異常が発生した際も、すぐに条件の見直しを製造課へフィードバックできた。紙から転記してExcelで分析するフローなら、1ヶ月前の話を現場に伝えることになりかねなかった。
不良要因のパレート図で今週・今月の上位要因がすぐ分かり、巻き具合による特性変化など製造条件との相関も見えるようになった。過去データはIDで一発検索。「あの人がいつやった検査はどうだったか」に、紙のファイリングを探さず答えられる。
このリードタイムデータをMotionBoardで集計し、個人ごとの作業時間とばらつき(標準偏差)を可視化した。横軸が作業時間、縦軸がばらつき。下図の左下(速くて安定)が理想である。入ったばかりの派遣スタッフと超ベテランでは、分単位で差が出る。速くてもばらつきが大きければ、ムラが多いと読める。

「この分析は、測定器のデジタル化など設備投資の効果測定にも使えます。『アナログ測定だとこの秒数、デジタル測定だとこの秒数』という差分が取れるため、投資後にみんながどれだけ左下へ寄るかを定量的に追えます」(岩城氏)

通信事業部の今回の取り組みは、転記・集計作業の削減で月64時間の効果となった。内訳の大部分は、紙の検査記録をExcelに転記する作業である。
「週15時間程度の転記作業が発生していた時代から、現在の規模で再計算すると、年間効果は約1.5倍程度まで上振れする見込みです」(大宮氏)
ただ、現場が実感している効果は、時間や金額の外側にある。紙運用のままなら受注を断らざるを得なかったかもしれない、という綱渡りを支え切れたかどうか。「お客様に納期を守って出荷できなかったんじゃないか」。担当者の中に残っているのは、その実感だという。
全社に目を広げると、帳票定義は約500種類、紙削減は月平均6,000枚以上(年間約7万枚)。i-Reporter本体のライセンス費用に対して効果額は十分に大きく、サーバー費用を含めても償却期間内に回収済みだ。新規部門の参入により、帳票定義は右肩上がりに増えている。
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 通信事業部の転記・集計作業 | 月64時間削減(現規模で1.5倍) |
| 検査帳票の対応枚数 | 平時の15倍の物量に3ヶ月で対応 |
| 紙削減枚数 | 月6,000枚以上・年間約7万枚 |
| 活用部門・帳票定義 | 20部門超・約500種類 |

オンプレミス化の稟議は、クラウド版ユーザー数の増加と費用対効果を重ねて経営層の承認を得た。国内製造業での導入実績の豊富さも、安心材料として効いたという。
「投資した以上、使わないと回収できないという構造が、横展開の推進力にもなりました」(岩城氏)
いまでは社内の打ち合わせなどで「i-Reporter」が共通言語として通じるようになっている。それ自体が、ツール乱立の抑止になっている。
導入が軌道に乗った部門で、現場からこんな声が聞かれる。今さら紙には戻れない。データ入力が当たり前の今では、検索できずファイリングが必要だった紙の時代が信じられない。
仙台品質保証課 通信グループの大宮氏の言葉は、もっと直接的だった。
「紙に戻せと言ったら暴動が起きる」(大宮氏)
最初は「何これ?」と戸惑っていた現場である。それがいつの間にか、タブレットが当たり前になった。転機は劇的な何かではない。現場の意見を最優先にして帳票を設計し、要望が出るたびに形にした。もともと使っていた紙帳票のレイアウトへの信頼は強く、デジタルに触れるほど要望は増える。その要望に応え続けた先に、定着があった。
部門内の状況把握や意思決定も速くなった。紙を経由するやりとりでは、事象の発生から把握・アクションまでにタイムラグがあった。いまは異常時のメール通知とMotionBoardの可視化で、情報がその日のうちに動く。社内のタブレット貸出制度も整い、相模原で保有する20台ほどの端末を急な立ち上げ時に貸し出すことで、新規部門のハードルを下げている。
SWCCのパーパスは「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ」。
帳票電子化の定着は、まさにその一例となった。
ここまでの電子化は、人がタブレットに入力する世界の話だ。次の段階が、すでに三重事業所で動いている。入力そのものを設備に任せる取り組みである。
電線を製造する押出機には温調計が複数付いている。従来は設備の裏に回り、目視で読み、転記していた。ConMas IoTの導入で、それがボタン一つになった。
「帳票内にボタンを設置し、押すと押出機のパラメータが自動で入力されます。20カ所ほどの目視転記が不要になり、現場から非常に期待されています」(岩城氏)


設備の裏に回らなくてよくなったことで、転倒の恐れが減り、作業環境の安全性も上がった。「設備から直接グラフで取得すればよい」という声もある。それでも帳票の形は残した。「何を作っているときにこの値だったか」。文脈ごと残ることに、帳票の価値があるからだ。現在2ラインで稼働中。三重の被覆線工場をモデルに、他拠点への水平展開を進める。相模原の製造部門でも、一部の在庫管理など基幹システムで賄えない部分のi-Reporter活用が来年以降に始まる見込みだ。
DX推進グループの中長期ビジョンは、i-ReporterのデータとMotionBoardをプラットフォーム化し、他システムのデータも集約してAI分析と組み合わせられる基盤の構築である。蓄積されたデータには文脈がある。だからAIへの問いかけで、アドバイスを得られる可能性も見えてきた。集計・分析・書類発行の自動化と、AIによる意思決定の高度化。グループ発足時に掲げた目標は、この延長線上にある。
導入・運用の道中では、サポートとコミュニティも積極的に使ってきた。お悩み相談室の投稿は類似課題のTipsとして頻繁に参照している。アクションボタンの使い方、ネットワーク設定。細かい部分ほど、他のユーザーの投稿が効く。

昨年始まったカイゼン提案では、複数帳票を同時に開いて入力できる機能のリリースが決定した。
少人数で複数設備を担当する部門から要望が多く出ていた機能である。「ユーザーとして非常にありがたい」と岩城氏。この拡張性は、類似ツールとの差別化やツール選定の理由にもなっている。MotionBoardのコミュニティにも参加しており、他社事例のノウハウが帳票設計や連携のヒントになっている。
最後に、同じ道を歩もうとする企業への言葉を岩城氏に求めた。返ってきたのは、ツールの話ではなかった。
「ツールを導入すること自体が目的にならないことが大切です。課題に対して、その解決策としてツールを使う。それがよい進め方だと思います」
そのうえで、MotionBoardとi-Reporterがノーコードで連携できることには触れておきたい、と岩城氏は続ける。ボタン一つでライブ連携ができ、データ収集から可視化までを短期間で構築できる。データ活用を一気通貫で、比較的手軽に始められることは、間違いなく魅力だからだ。
「今まで見えなかったことが見えると、さまざまな気づきが生まれ、改善の好循環ができていきます。効果として非常に高いと実感しています。1部門・1拠点からのボトムアップで始め、成果を見せながら横展開していく。SWCCの歩みが、同じ課題を持つ製造現場の参考になれば幸いです」(岩城氏)
2019年に始まった電子帳票化は、5年余りで全社の仕組みに育った。需要が急増したとき、その仕組みは3ヶ月で現場を作り替えてみせた。次に同じ波が来る現場は、どこの会社にもあり得る。
そのとき紙のままか、そうでないかでどのように違うか。
答えはSWCCが教えてくれた。
上記のレビューは、ITreview(https://www.itreview.jp/products/i-reporter/reviews)より引用しています。
※ITreviewは実名・企業登録制のレビュー投稿サイトで、現場担当者の生の声が数多く掲載されております。