
株式会社高見澤

製造現場では1日40枚の手書き日報が発生し、記入後に基幹システムへ打ち直す二重作業が慢性化。帳票には基幹システム入力に必要なコード類が含まれておらず、都度調べる手間も発生していた。
カイゼン効果!
製品名を選択すると使用部材と必要数が自動計算される帳票設計を実現。入力範囲エラーと必須項目チェックで記入漏れ・誤記録を事前防止。承認フローの電子化により、製造部・品質管理部合計で1日30分以上の工数削減を達成。
賞味期限を1件ずつ目視確認・手書き転記する必要があった。誤記録による自主回収リスクも常に隣合わせだった。
カイゼン効果!
カメラをラベルにかざすだけで賞味期限が自動入力される仕組みを構築。入力時間が50%以上削減。ヒューマンエラーのリスクも大幅に低下し、食品安全の観点からも重要な改善を実現。
製造スタッフが紙に記録した日報を事務所まで届け、営業スタッフが集計するフローが繁忙期の大きな重荷に。等級・サイズ・包装形態が多岐にわたる青果物の在庫計算は手書き+電卓で行われ、30〜45分を要するうえ、計算ミスの発覚時には現場で数え直しが発生していた。
カイゼン効果!
帳票電子化により日報の物理的な受け渡しが不要になり、リアルタイムで情報共有が可能に。在庫計算にかかる時間は30〜45分→約15分に短縮。計算ミスはゼロになり、等級・サイズ誤りによる売上計上ミスのリスクも解消された。

常務取締役副事業統括 兼 フードセグメント セグメント長 髙見澤 秀毅 氏

フードセグメント 製造部 品質管理部 部長 石倉 裕介 氏

フードセグメント 品質管理部 品質管理課 課長 依田 昌晃 氏

フードセグメント 管理部 部長 牧 正明 氏

フードセグメント 管理部 管理課 課長 駒津 真也 氏

フードセグメント 品質管理部 品質管理課 係長 M 氏

フードセグメント 管理部 管理課 業務係 係長 I 氏

フードセグメント 製造部 特産課 特産係 Y 氏

フードセグメント 製造部 特産課 特産係 工場長 S 氏
1949年の創業以来、長野県を基盤に建設資材・石油・食品・不動産など多岐にわたる事業を展開してきた株式会社高見澤。東京証券取引所スタンダード市場への上場企業として従業員541名・売上高306億円を誇る同社は、「地域に必要とされ、信頼され、貢献できる会社を目指す」という経営理念のもと、長野の産業と地域社会を多角的に支え続けている。
その事業の原点は、創業者が天秤棒でリンゴを担いで売り歩いた「振り売り」にある。

リンゴ販売のオフシーズンに手が余った創業者が、整備されていない村の道に砂利を運んで道づくりを始めたことが事業多角化の起点だ。砂利を使った道の整備がインフラ事業の始まりとなり、そのトラックに必要なガソリンを扱うことからエネルギー事業が生まれた。事業が事業を呼ぶ有機的な成長が76年間積み重なり、今日の多角経営体制ができあがった。創業時から壁に掲げられた「高く買って高く売る」という精神。農家にも潤ってもらえる商売を続けることが、地域との信頼を築いてきた。その考え方が今も経営の根底に流れている。
2024年7月、同社は食品関連の複数部門を統合し、フードセグメントを発足させた。
この3事業部が一つの組織に統合された。
さらにきのこ用培地(菌床)の製造・販売、農業資材の取り扱いときのこ加工品の製造・販売を加え、
“食”に関わる5事業がフードセグメントの傘の下に集まった。
フードセグメント長を務めるのは、常務取締役副事業統括 兼 フードセグメント セグメント長を務める髙見澤秀毅氏。
長野市内の本社と、中野市・小諸市に点在する複数工場拠点を束ねながら、製造現場の強化と業務標準化を両輪で推進している。

「メーカーであり商社でもあるが、やはり作れるところが一番の強み」と語る髙見澤氏が次に描いた絵が、散在する5事業・6拠点を横断する「業務の平準化」だった。
フードセグメント発足以前、食品関連の各事業部は実質的に独立した組織として動いていた。「当社は食品関連も含めて13事業部があって、管理基準も事業ごと。13個のお城が1個1個、てんでばらばらだった」と、髙見澤氏はその頃を振り返る。管理基準も、帳票の形式も、情報共有の仕組みも、事業部ごとに別々だった。
DX推進の機運は社内でも高まっていたが、いざ取り組もうとすると「DXする前に、組織の問題が大きすぎる」という現実が壁として立ちはだかった。そこで打ち出したのが、セグメント制への移行。「整った環境と整った仕組みを整備しなければ意味がない」という判断のもと、2023年ごろから本格的な業務標準化の取り組みがスタートした。フードセグメント発足後、管理部が「平準化・標準化を推進する」ことを正式なミッションに掲げ、i-Reporterの導入もこの流れの中で決まった。

チーズ部門(小諸工場)は、世界各地のチーズの加工・販売と菓子製造・販売を手がける部門だ。同事業部では、1日約40枚の手書き製造日報が現場の大きな負担になっていた。
製造部・品質管理部長の石倉裕介氏がi-Reporterに初めて興味を持ったきっかけは、ある意味シンプルなものだった。「自分の字がきたないから」。

石倉氏は赴任前から「紙に印刷したものを見ながらパソコンに打ち直す」という二重作業の非効率を何度も目の当たりにしてきた。チーズ部門への赴任後も同じ光景が繰り返されていたため、まずExcelと複合機の使い方を見直すことから着手。この取り組みだけで印刷費を約70%削減することに成功し、「ペーパーレス化は経費的にも大きなプラスになる」という確信を深めた。
さらに、製造日報の電子データ化ができれば基幹システムへの製造実績入力も自動化できると考えた石倉氏は、複合機入れ替えの相談をしていた富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の担当者から「工場や日報のペーパーレス化に最適なツール」として紹介されたi-Reporterを、複数製品と比較検討した上で導入を決めた。
当時、製品の部材情報や基幹システム入力に必要なコード類は帳票に含まれておらず、確認のたびに別途調べる必要があった。帳票作成のためにラベルを1枚消費するという非効率も慢性化していた。

一方、青果販売部門(中野工場)では、紙帳票の課題がより深刻な形で現れていた。
製造スタッフが箱詰め作業の記録を紙に書き、それを事務所まで届けてから、営業スタッフが数量や単価を入力して集計する、そのフローが繁忙期になると大きな重荷になっていた。

「現場で荷造りの記録を書いたら、事務所まで持参していたんです。」と製造部特産課・特産係のY氏は語る。

製造日報が営業へ届くのは工場が終わる定時。営業スタッフが単価入力や集計に取りかかれるのは、その日の業務が終わってからということになる。通常は品目ごとに1日10枚前後の日報だが、リンゴのお歳暮ギフトシーズンには1日2,000個規模のギフトを製造しながらその全品分の記録を紙で書いて事務所まで届ける必要があった。
製造側は翌日の仕込み準備が、営業側は集計作業が、それぞれ定時後に重なり、「記録の受け渡しだけで夜遅くまでかかることもあった」と髙見澤氏は振り返る。
さらに深刻だったのが、在庫管理の複雑さだ。青果物は品目によって等級・サイズ・包装形態がすべて異なる。

リンゴだけを例にとっても、等級は秀・優など5段階、玉サイズは24玉から56玉まで18種類に及ぶ。市場から18kgのコンテナで届いた商品を現場で選別し、等級・サイズ別に仕分けて記録する作業は、パレット上に前日・前々日の在庫が混在する中で、手書き+電卓で行われていたと、フードセグメント 管理部 管理課 課長 駒津 真也氏は言う。

しかし、これらの集計が終わらないと営業が売上を立てることはできない。
「3日前に市場に売り上げたものまで全部合わせて計算するので、どこかで間違えると全部おかしくなる。10キロで5,000円のものが、傷ものの2,500円として出てしまったら大損です」と髙見澤氏はその当時の怖さを語る。

毎日確認が噛み合わず、「計算ミスが発覚するたびに、現場に戻って数え直し。」という状況が繰り返されていた。
ツール選定にあたっては、複数の競合製品との比較検討が行われた。石倉氏が検討時に考えた事は、「適度な難易度があること」だった。「あるシステム担当の知人から、そのツールを入れたら営業日報が2種類、3種類、4種類と各自が勝手に形を変えてCSVの落ち方まで変わってしまったという話を聞いていた。簡単すぎることもリスクになると感じていた」。

i-Reporterを選んだ理由として石倉氏が挙げたのが、「帳票設計にちょうどいいハードルがある」という点だ。誰でも自由に作れる環境では書式が乱立するが、適切なハードルがフォーマットの標準化を担保し、管理部が中心になって整える規律が自然に生まれる。
加えて、
①既存の紙帳票レイアウトをそのまま電子化できる点、
②承認ワークフローの使いやすさ、
③i-Repo EdgeOCRをはじめとする拡張性の広さ、
という3点が選定を後押しした。
導入を成功させた最大の要因は、専任推進体制の整備だ。石倉氏は導入を決めてから約2ヶ月間、なかなか体制が定まらず思うように動けない時期があったと言う。
「体制を整えて進めなければならない」と感じた石倉氏が、品質管理部係長のM氏と管理部業務係長のI氏に声をかけ、この2人を「専任担当」として帳票設計・展開に注力させる体制を組んだ。


「それぞれ他の仕事もある中で、i-Reporter推進に重きを置いて動いてもらった。そこからスピードがだいぶ上がりました」と石倉氏は語る。I氏とM氏が現場の要件を吸い上げながら帳票定義を一つひとつ積み上げていく体制が整うことで、チーズ部門での本格稼働が始まった。
I氏が運営上で大きく頼りにしたのが、i-Reporterのユーザーコミュニティだ。「帳票設計時に”仕様か設定ミスか”という疑問にすぐ返答をもらえた場面が何度もある。ユーザー同士のやりとりで理解が早く、“ひとりじゃない”と思えることが大きな安心材料になった」。問い合わせよりも早く、より具体的な答えが返ってくるコミュニティの存在が、新しい帳票設計や機能への挑戦を後押しし続けた。

チーズ部門では、製造記録・品質記録の電子化を軸に運用が本格化した。M氏とI氏が心がけたのは、「まずiPadに慣れてもらうこと」。第一段階として既存の紙帳票をそのままi-Reporterに移植し、慣れてきてから自動入力機能を組み込んでいくという段階的な移行方針をとった。
最終的に目指したのは、製品名を選択すれば必要情報が連動して表示され、入力が最小限で済む帳票設計だ。例えば、チーズを16個ずつ箱に詰める製品の場合、製品名を選択すると使用するチーズ・ラベル・箱の種類が自動表示され、製造予定数を入力すると各部材の必要数が自動計算される。「誰でも製造日報を見れば、迷わず製造できる仕組み」がここに完成した。
当初ベテランスタッフから「不要では?」という声もあったが、新入社員が「製造日報を見れば迷わず作業できる」と実感してからは、標準化と人材育成の両面で効果が認められるようになった。
KPIの計測方法も工夫されている。作業者が作業開始時刻と終了時刻をiPadでタップ入力するだけで、「何人で何分かけて何袋できたか」という製造スピードが関数で自動計算される。
ミス防止の工夫も随所に盛り込まれた。数値の入力範囲に上限・下限を設け、範囲外の値が入力されるとNGアラートが出る仕組み、必須項目が未入力のまま承認申請できない設定、これらによって記入漏れや誤記録が事前に防止される。

また帳票には、画面上には表示されないが内部で保持している数値(計算の中間値や管理用データ)も組み込まれており、集計時に必要な数字を自動的に拾える設計になっている。
この設計プロセス自体が、副産物として「帳票棚卸」の機能を果たした。項目を1つひとつ見直す中で、「基幹システムへの入力に必要なコード類が紙帳票には含まれていなかった」「逆に不要な項目が多数あった」という事実が初めて可視化されたのだ。
「電子化しようとして初めて、今まで使っていた帳票の問題点が全部見えてくる」とI氏は語る。
i-Reporterへの移行プロセスが、業務設計そのものを見直す機会として機能した。
チーズ部門での承認フローは、紙の時代から続く3段階で設計されている。現場スタッフが製造日報を入力して承認申請を上げると、まず製造部業務係がパソコン上で照合する。

ここでのチェックポイントはトレーサビリティの確保、いつ・何が・いくつできたかを基幹システムと突き合わせ、万が一問題が起きた時に追跡できる記録として完結させることだ。その後、品質管理部が確認し、工場長が最終承認を完了する。
入力後に即アップロードされたデータをパソコンで確認できるようになったことで、日報の確認と承認にかかる時間は製造部・品質管理部で合計1日30分以上の短縮を実現している。
短縮を生んだのは、データが届くスピードだけではない。「見るべき場所」が帳票の側に用意されたことが大きい。
紙の時代は、帳票ごとに同じ項目でも記載される場所が違い、「同じ項目でもこの帳票ではここにあるけれど、別の帳票ではこっちにある」という状態だった。電子化にあわせてレイアウトを統一したことで、確認する側は同じ項目を同じ場所で見られるようになった。
さらに、確認が必要な箇所は自動照合の結果が色で表示される。読み取った品目コード・JANコードや賞味期限が、マスタや製造日から自動算出した値と一致していれば緑、違っていれば赤。

「ここだけ見れば異常の有無がわかる」という状態が帳票の上にできあがった。工場のパトライトのように、正誤が一目で分かる仕組みだ。

もう一つ、依田氏が強調する品質管理上の重要な視点がある。「工場内に紙があればあるだけ、異物混入のリスクが増える」という考え方だ。ボールペン・クリップ・紙片といった記録用具や帳票そのものが工場内に存在すること自体がリスク要因になるため、「紙をなくすことがすなわち異物混入対策になる」という発想でペーパーレス化を推進してきた。

i-Reporter導入による製造記録の完全デジタル化は、業務効率化と品質管理強化を同時に実現する施策として位置づけられている。
チーズ部門で近年導入したi-Repo EdgeOCR機能が、現場の入力業務をさらに一変させた。特に効果が大きかったのが、賞味期限の読み取り入力だ。
i-Repo EdgeOCRとは:i-Reporterのオプション機能。エッジAI型の高速OCRにより、ラベルや印字・バーコードなどをiPad/iPhoneのカメラで読み取り、帳票へ自動記録する。オフラインでも動作し、目視確認・手書き転記・正誤判定を自動化する。
同社では、外箱に貼り付けるラベルの賞味期限とその中の実際の商品の賞味期限が異なってしまうことがたびたび発生していた。
従来は目視確認と手書き転記で行っており、誤記録リスクも常に隣合わせだった。
i-Repo EdgeOCRの導入後、作業者はカメラをラベルにかざすだけで賞味期限が自動入力される。
また、そのOCRによる入力結果を計算式で自動チェックを行うことでヒューマンエラーのリスクが大幅に低下し、品質管理部のチェック負荷も軽くなった。

今後の活用展望として、依田氏は「計量値の読み取り」も視野に入れていると話す。材料を計量した時のスケール表示をOCRで読み取り、実際の計量値と指示値が合っているかを自動確認できれば、さらなる品質管理の精度向上につながる。

チーズ部門の稼働が軌道に乗り始めた頃、80km離れた青果販売部門から予想外の動きが生まれた。Y氏がチーズ部門(小諸工場)の工場を見学した際、「現場で荷造りの紙を書いたら、それを事務所に持っていかずに済む」という話を聞き、目を輝かせた。「すごく魅力的に見えてしまって」、その場で手を挙げ、青果部門への導入が決まった。

導入後の帳票設計は、ほぼ独自での設計となった。青果物は品目によって等級・サイズ・包装形態がすべて異なるため、チーズ用の帳票をそのまま流用することはできない。
現在稼働している帳票は13種類。
仕入れ記録・箱詰め記録を主軸に、在庫管理・出荷管理・作業工数記録まで広がっている。ジュースの在庫管理、有給申請まで、i-Reporterで完結させる場面も増えてきた。

難しかったのは、”勘と経験”中心の業務を「数字で管理する」発想に切り替えることだった。
「最初は入力の手間に戸惑う声もあったが、使い慣れると
という手間の消滅の方が大きかった」とY氏は話す。
青果販売部門でi-Reporterがもたらした最大の効果の一つが、在庫管理の精度向上だ。

前述の課題が解消され、在庫計算にかかる時間は30〜45分から約15分に短縮。そして「計算ミスは全くなくなった」とY氏は断言する。「数字が合わなくなってから探すのではなく、その場で発見できる速さが一番大きい」と髙見澤氏も強調する。
「この数量に対して何人いれば何時間で終わる」という作業計画も、データの蓄積によって「誰でも分かるもの」に変わった。季節によって品目・作業量が大きく変動する青果現場で、データに基づく人員計画が立てられるようになったことは、繁忙期の残業削減にも直結している。
さらに石倉氏が目指している「作業工数から原価を割り出す」取り組みも現在進行中であり、どの品目にどれだけのコストがかかっているかを可視化することで、より計画的な事業運営を目指している。

i-Reporterの活用はさらに広がりを見せている。フードセグメント全5事業・6拠点を横断する安全衛生パトロールへの展開だ。
なお、日常的な設備点検・フォークリフト点検などの記録にもi-Reporterが活用されており、チーズ部門で整備した設備点検帳票はセグメント内の他拠点にもそのまま横展開されている。また、製造現場で発生したヒヤリハット(事故未遂)の記録帳票も同様に運用されており、安全管理の記録基盤としてもi-Reporterが一元的に機能している。
各事業から選ばれた安全チームメンバーが月1回工場を巡回し、3ヶ月サイクルで全6拠点を一巡する。
チェックは「改善点」と「良好点」の2種類に分かれており、指摘事項はプルダウンで区分(労災リスク・異物混入リスクなど)と理由を選択してから写真を添付する形で記録する。
記録は社内グループウェアに掲示され、セグメント全体のメンバーがリアルタイムで閲覧できる。

この活動の最大の特徴は、「自分の工場を知らない外の目が入ること」だ。青果の担当者がチーズ工場を巡回し、チーズの担当者がきのこ培地の工場を見る。
「あの工場では当たり前のことが、こちらの工場では指摘対象になる」、内部の人間には「見えなかった問題」が、他拠点の目によって次々と明らかになっていく。ブレーカーのラベルが何も貼られていない状態が、長年誰にも気づかれず放置されていた、そんな事例も実際に発見されている。
「前回の指摘が次回のパトロールでアフター確認される」という継続的な改善サイクルも、i-Reporterで初めて機能するようになった。紙の時代には、記録を集めるだけで1週間以上かかることもあったが、今はリアルタイムで共有される。「見られるから綺麗にする」、その意識変化が、現場の安全レベルを底上げし続けている。
元はデジカメとExcelで運用を試みたが、「写真がどこの写真だか分からなくなった」と髙見澤氏は苦笑する。i-Reporterに切り替えてから、撮影した場所・時刻・チェック項目がすべて一体化した記録になったことで、データの信頼性が飛躍的に高まった。
安全衛生と並んで、i-Reporterが文化的な変革をもたらしたのが改善アワードだ。2025年10月にスタートしたこの取り組みは、ボトムアップの改善提案をi-Reporterの帳票で受け付け、セグメント内に共有・表彰する仕組みだ。
帳票の設計はシンプルを極めた。改善前の写真と改善後の写真を撮影し、改善内容と効果を入力して送信、これだけだ。撮ってコメント加えて完成。5分で終わる。
従来、製造業での改善提案活動は「紙に書いて集めて、外注でパンチング処理して、点数をつけて…」という重厚なプロセスが一般的だが、その手間がi-Reporterで一気に消えた。
「報告書の作成に30分かかるなら書く気がなくなる。5分で終わるなら、試してみようという気になる」と、フードセグメント 管理部 部長 牧 正明氏は言う。

投稿された改善事例は社内グループウェアに掲示され、セグメント全体のメンバーが閲覧できる。「ミネラルウォーターの工場でこういうことができているなら、チーズの工場でも使えるんじゃないか」という気づきが自然に生まれ、改善の横展開が加速した。

「もともと改善の意識や文化があまりなかった」とI氏は振り返る。「個人でやっていたことが改善だと思っていなかったし、共有もできていなかった」、それが、i-Reporterという共有プラットフォームを得たことで「これも改善だったのか」という意識覚醒につながっている。

半年間で60件の改善提案がセグメント内から集まり、6月の事業年度終わりには初めての表彰式が行われた。
拠点ごとの提案数が見え、「あの工場には負けていられない」という良い競争意識が芽生えている。
チーズ部門から青果部門、安全衛生、改善アワードへと広がったi-Reporterの活用。この横展開を成功させた要因を、推進チームは3点に整理する。
①工場見学が最大のきっかけ、実際に稼働している現場を見てもらうことが、次の現場の自発的な導入意欲を生む。説明や資料よりも「実際に運用している様子」が人を動かす。フードセグメントになってから始めた「みんなで工場見学しよう」という取り組みが、横展開の最大のエンジンになっている。
②やる気のあるスタッフに火をつける、「今までの常識にとらわれがちなベテランスタッフに入ってもらうのは難しい。でも、今のやり方に疑問を持っているスタッフや新しいことを始めたいスタッフに、I氏を通じて”こんなことができる”と実際に見せていった」と石倉氏は語る。トップダウンでなく、現場の変化意欲に火をつけて自走させることが横展開の鍵だ。
③現場の入力ハードルを徹底的に下げる、「スマートフォンで会員登録するくらい簡単に入力できる」を設計目標に。日付・ロールナンバーはタップで自動入力、入力項目を絞り込む連動設計、必須項目の設定、「入力する手間が減ること自体が、反対勢力を乗り越える最大の説得材料になる」と石倉氏は言う。
現在、フードセグメント全体での帳票定義は108種類に達し、日報・点検記録・安全衛生・ヒヤリハット・改善アワードと用途は多岐にわたる。KPI管理帳票だけでも60項目を集計・可視化できる体制が整い、従来は「感覚」だった数字が、日々のi-Reporter日報データから自動集計されるようになった。

「以前は感覚でやっていたことが、全部数字で見えるようになった」という変化が、各工場の製造効率改善と計画的な人員配置につながっている。
i-Reporter導入による定量的な成果は、数字に明確に現れている。
製造部と品質管理部だけで1日1時間・年間240時間の工数削減を達成。日々の記録・承認・集計にかかる時間が圧縮され、本来の製造業務に人的リソースを集中できるようになった。
青果部門では在庫計算にかかる時間が30〜45分から約15分に短縮。そして計算ミスはゼロになった。等級や玉サイズの誤りが市場への売上計上ミスにつながりうる現場で、この変化の意味は大きい。
チーズ部門の賞味期限管理ではi-Repo EdgeOCRの活用により、作業時間は半分以下に。誤記録リスクも大幅に低下し、自主回収のリスク低減という食品安全の観点からも重要な改善となった。
定性的な効果としては、確認のための書類を探す時間の消滅、リアルタイムでの情報共有による部門間連携の円滑化、安全意識の底上げ、そして60件の改善提案に象徴される「自走する改善文化」の醸成が挙げられる。
また、蓄積されたデータは
の2種類に分けて運用されている。
製造トレーサビリティの記録はそのまま保管し、KPI・安全パトロール・ヒヤリハット・改善アワードのデータは定期的に集計・共有して現場改善に活かすという体制が、データの目的に応じた使い分けを可能にしている。
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 製造部・品質管理部の年間工数削減 | 240時間(1日1時間×240日) |
| 賞味期限入力(i-Repo EdgeOCR) | 50%以上削減 |
| 青果部門の在庫計算時間 | 30〜45分 → 約15分に短縮 |
| 青果部門の計算ミス | ゼロ |
| 改善アワード提案件数 | 半年で60件 |
「導入してみて感じたのは、i-Reporterは思っていたより取り組みやすく、現場の負担が減ると改善活動も自然と動き出すということ」と石倉氏は導入の感想を語る。

食品業界はとりわけ記録業務が多く、煩雑になりがちな現場だ。「記録の確かさ・スピード・見返しやすさ、この3点でi-Reporterはおすすめしたい」と石倉氏。
「特に記録が多くて煩雑になりがちな食品業界は、電子化することで記録が一元管理でき、確認も共有も格段にラクになる。あとは始めてみれば、現場が自然と変わっていく」。
次のステップとして、髙見澤氏が視野に入れているのがクレーム報告書の統合だ。
現在、青果・チーズ・ミネラルウォーターなど事業ごとに別々のフォーマットで運用されているクレーム報告書を、i-Reporterで横断的に統一する構想が進んでいる。
食品を扱う各事業のクレーム報告書をセグメント全体で統合することで、品質管理の精度向上につなげる構想が進んでいる。
また、フードセグメントで生まれた改善提案の文化を、インフラセグメントをはじめとする他のセグメントへも広げていく全社展開の構想も描かれている。
多拠点・多事業にわたる食の現場で、標準化と改善文化を同時に育てた株式会社高見澤のフードセグメント。今後のさらなる展開が期待される。

上記のレビューは、ITreview(https://www.itreview.jp/products/i-reporter/reviews)より引用しています。
※ITreviewは実名・企業登録制のレビュー投稿サイトで、現場担当者の生の声が数多く掲載されております。