物流DXとは?定義や3つのメリット、よくある課題、成功事例

物流DXは、小口配送の増加や労働力不足など物流業界が抱えるさまざまな課題を抜本的に解決する手段として、国が旗振り役となって推進している取り組みです。
自社の物流業務を変革し、今後の物流業界で勝ち残るためには、物流DXに関する正しい知識を身につける必要があります。

そこで今回は、物流DXの定義や3つのメリット、導入時に見られる課題、実際の成功事例などを解説します。
物流DXに役立つソリューションも取り上げて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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物流DXの定義

国土交通省の資料によると、物流DXは「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義されています。
また、同資料では「物流DXにより、他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につなげる」とも言及されています。
単にシステムを導入することだけを指すのではなく、機械化やデジタル化によってサプライチェーン全体の変革を目指す施策と言えるでしょう。

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。
「Transformation」の「trans」をXと略すことで、DXと表記します。デジタル技術を⽤いた事業やビジネスモデルの変⾰を意味する言葉です。

<物流DXによって実現すること(厚生労働省)>

*既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
*物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新

【出典】「物流DXについて」(国土交通省)
【参考資料】「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」(国土交通省)

物流DXが必要とされる物流業界の現状・課題

物流業界や運送業界では、ほかの業界や業種と比べてもDXの取り組みが強く求められています。その理由はどこにあるのでしょうか。こちらでは、物流DXが必要とされる業界の背景や課題を解説します。

小口配送の増加

ECサイトの普及や新型コロナウイルス感染症の流行などの影響により、個人向けの単体注文の需要が増加しています。国土交通省の発表によると、2021年度の宅配便取扱個数は、49億5323万個で過去最高を記録しました。個人宅への配達が増えると、再配達によるトラックドライバーの負担や荷物の保管コストの増大が懸念されます。

また、小口配送の増加には、1回あたりの配送量が減ってしまい配送効率が悪くなるという問題も。トラックの積載効率が低下し、売上にも影響しやすくなります。実際、近年の貨物自動車の積載効率は40%以下の数値で推移しており、トラック内のおよそ6割が埋まっていない状態で走行していることになります。物流DXの推進により、配送ルートの最適化や積載効率の向上に取り組み、増加する小口配送に対応する必要があるでしょう。

【出典】「令和3年度 宅配便取扱実績について」(国土交通省)
【出典】「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(経済産業省・国土交通省・農林水産省)

労働力不足

物流現場では人手不足が深刻化しています。厚生労働省の調査によると、2022年11月1日時点での全産業における欠員率が3.1%なのに対して、運輸業・郵便業の欠員率は4.4%となっており、約1.5倍近い数字です。有効求人倍率も1.92となっており、全職業平均の0.97と比較して約2倍高く、人員不足が常態化していることがわかります。

また、人材不足が進行したことで、物流業で働く労働者の年齢構成にも変化が生じています。具体的には全産業平均より若年層の割合が低く、中年層の割合が高くなっており、従業員の高齢化が加速しています。この結果から、2028年度にはトラックドライバーが約27.8万人不足するとの試算も出ています。今後もこの状態が続くと、従来の物流サービスを維持できなくなる可能性があるため、機械化やデジタル化による労働力不足の解消が急務です。

【出典】「労働経済動向調査(令和4年11月)の概況 結果の概要」(厚生労働省)
【出典】「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(経済産業省・国土交通省・農林水産省)

低賃金と長時間労働による従業員の負担増大

物流業界は「給料が安い」「労働時間が長い」などのイメージがあり、若い労働者の確保を妨げる要因の一つとなっています。実際、トラックドライバーの年間所得は全産業平均と比べて約5〜10%低く、労働時間は全職業平均より約2割長いとの調査結果も発表されています。新たな人材の確保が難しくなっている現代だからこそ、物流DXに取り組み、低賃金・長時間労働のイメージを払しょくする必要性が高まっていると言えるでしょう。

【出典】「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(経済産業省・国土交通省・農林水産省)

時間外労働の上限規制

物流現場では、2024年4月1日から適用される時間外労働の上限規制による影響も懸念されています。具体的には、トラックドライバーをはじめとした自動車運転業務に関して、年間の時間外労働の上限が最大960時間となる規制です。

これにより一人あたりの労働時間の減少が予想され、物流会社の売上低下やドライバーの収入減少、荷主企業が支払う運賃の上昇などにつながる可能性があります。そのため、IT技術などを活用し、業務効率化や省人化に取り組むことが求められます。

物流コストの高騰

物流コストの高騰も業界が抱える課題の一つです。物流コストとは、物流業務において発生するあらゆるコストのことで、機能別には輸送費や保管費、荷役費、包装費などの項目があります。

日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、2021年度の全業種における売上に対する物流コストが占める割合は、平均5.70%で過去20年間の調査で最大となりました。物流コストの中でも特に輸送費の比率が高く、労働力不足によるドライバーの人件費の上昇や、原油価格の高騰などが影響していると考えられます。そのため、ロボットやITツールを活用して物流コストを圧縮する取り組みが進められています。

【出典】「2021年度物流コスト調査結果を発表しました ~売上高物流コスト比率は5.70%~」(公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会)

物流DXの市場規模の拡大

上記の通り、物流業界はさまざまな課題に直面しており、課題解決に向けて国を挙げて物流DXが推進されています。2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」にも「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)」という項目が盛り込まれました。その結果、物流DXの市場規模が着実に伸び続けているのが現状です。

株式会社富士経済の調査によると、2022年における次世代物流システム・サービス市場の規模は、7,114億円を見込んでいます。これは2021年比107.4%の値です。次世代物流システム・サービスとは、物流DXにつながる、あらゆるものが該当します。ロボティクス・オートメーションやIoT、AIなどが代表例です。

また、2030年の予測は1兆1,831億円となっており、2021年と比較して78.6%の増加が見込まれています。このように、物流DXの市場規模はこれからますます伸びていくことが想定されます。

【出典】「総合物流施策大綱」(国土交通省)
【出典】「次世代物流システム・サービス市場を調査」(株式会社富士経済)

物流DXのメリット

物流DXを実践すると、企業の業務プロセスにどのような良い影響があるのでしょうか。続いては、物流DXのメリットを具体的に3つご紹介します。

自動化・機械化による物流業務の省力化

物流DXでは、トラックや船といった幹線輸送手段の自動化・機械化が進むことで、物流業務の省力化を実現できる点がメリットです。自動運転技術を活用したトラックの隊列走行や自動運搬船など、実用化に向けた実証実験に成功した事例も多く、物流業界が抱える労働力不足の解消が期待されています。

また、同分野で特に注目されているのが、ラストワンマイル配送へのドローンの活用です。ラストワンマイルとは、物流における最後のプロセスである、商品や荷物をお客様に届ける工程のこと。従来は人力に頼ることの多い部分でしたが、ドローンなどを使って配送を自動化することで、省力化を目指す取り組みが加速しています。

そのほかにも、近年では物流DXによる倉庫内作業の効率化も進んでいます。無人搬送車による省人化や、スムーズなピッキング作業の実現を目的としたデジタルピッキングシステム(DPS)の導入などが代表例です。

データ活用や配送状況の可視化による業務効率の向上

物流DXでは、各種システムを自社の物流プロセスに組み込むことで、業務の可視化や効率の改善が期待できます。例えば、車両の動態管理システムを活用するとリアルタイムで配送状況を把握できるようになり、配送遅延の回避やトラブルへの迅速な対応が可能です。スピーディーな配送を実施できれば、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

運送手続きの電子化によるコスト削減

物流DXによって今まで紙で発行していた帳票を電子化することで、書類の保管や管理にかかるコストを削減できます。出荷伝票や納品書、在庫管理表、ピッキングリストなど多くの帳票を管理する必要のある物流現場だからこそ高い効果が期待できるソリューションです。

帳票の電子化システムを導入する際は、紙やエクセルなどの使い慣れたシステムから移行しやすいものを選ぶのが良いでしょう。物流現場は高齢化が進んでおり、新たなシステムの導入によって使い勝手が大きく変わってしまうと、かえって業務効率が低下してしまう可能性があるためです。

物流DXのよくある課題

物流DXの必要性は認識しているものの、さまざまな課題を抱えており、取り組みを進められない企業も少なくありません。こちらでは、物流DXのよくある課題と解決に向けたアクションの具体例や取り組みのポイントをご紹介します。

拠点ごとに個別最適化された業務ルールの存在

物流現場では、拠点ごとに業務の方法やプロセスが異なるケースが多い傾向にあります。扱う商品や業務内容などに合わせて独自の工夫や改善を重ねているのが一般的です。

そのため、拠点間の差異を考慮せずに物流DXを進めようとすると現場が混乱するおそれがあります。業務管理システムの導入などを全拠点で一気に行うのは難しいでしょう。最初は一部の拠点に絞って導入し、データの収集や分析、検証を繰り返した上で少しずつ拡大するのが望ましいと言えます。

既存の体制・方法を変えることに対する従業員の抵抗

物流業務の多くはデジタル技術を活用しなくても成り立っていることから、物流DXによって既存の体制・方法を変えることに従業員が抵抗するケースもあります。特に経験豊富な従業員ほど、自身のやり方のほうが効率的と考える場合も多く、物流DXの重要性をすぐに理解してもらうのは難しいでしょう。また、業務状況が逼迫しており、システム導入にともなう研修を行う時間を確保できない現場も少なくありません。

このような課題を解決するには、最新事例や期待できる効果を踏まえて説得を試みるとともに、スモールスタートでDXを推進するのが効果的です。例えば、従業員にアンケートを取り、不便に感じている部分からデジタル化を進めると抵抗を受けにくくなるでしょう。

従業員のデジタル技術に関する知識の不足

物流DXの取り組みは進めているものの、デジタル技術に関する知識の不足によって現場に適したシステムを導入できていないケースもあります。特に、技術ベースでシステムを検討している場合には注意が必要です。最新鋭のシステムを導入しようとするあまり、現場の使い勝手や既存システムとの連携性などを見落とす可能性があります。

物流DXにおいて、デジタル技術の活用は手段の一つです。導入システムを選ぶ際は、現場の業務効率化や物流改革への寄与度を重視する必要があります。そのためには、物流DXに関する勉強会を開催したり、セミナーに参加したりなど、インプットの機会を設けるのも良いでしょう。また、新たなシステムを取り入れる際は、試験導入を行った上で現場からのフィードバックを確認することが大切です。

物流DXの事例

最後に、現場帳票の電子化システムである「i-Reporter」の導入により、物流DXに成功した事例を2つご紹介します。それぞれの企業様は、自社の課題に応じてi-Reporterを活用し、生産性の向上やコスト削減を実現しています。

部品管理の自動化で業務効率化を実現

まずは、情報機器の生産を手がけるミントウェーブ名古屋向上様の事例です。同社では、部品の入出庫作業の効率化に課題を抱えていました。具体的には、部品の入出庫に関する情報を紙ベースの在庫管理表 で管理しており、入力作業の手間や記入ミスなどが発生していたのです。

そこで同社では、紙ベースの在庫管理表をi-Reporterに置き換えることで、DX化を実現しました。部品の入出庫情報をすべてシステム上で確認できるようになり、月に840分ほどかかっていた管理作業の90%削減に成功しています。

また、i-Reporterの活用によって正しい在庫をリアルタイムに把握できるようになり、仕入れ業務の効率化や在庫差異が発生した際の迅速な解決にも役立っています。部品を過剰に仕入れたり不足したりするリスクを軽減でき、経営全体に良い影響を与えていると言えるでしょう。

より詳しい情報は以下のページからご覧ください。


【i-Reporterユーザー事例】月に840分ほどかかっていた出庫の管理作業を90%軽減

QSCチェックの電子化で作業効率を大幅に改善

続いては、讃岐釜揚げうどん専門店「丸亀製麺」をはじめとした、外食チェーン店を手がける株式会社トリドール様の事例です。こちらの企業では、各店舗で毎日実施しているQSCチェックの効率化に課題を抱えていました。QSCは、主にサービス業で顧客満足度を最大化するために重要とされる項目で、Quality(品質)・Service(サービス)・Cleanliness(清潔さ)の3つから成り立っています。食による感動の提供をモットーとしている同社が重要視している指標です。

しかし、従来の仕組みでは店長が閉店後にまとめてチェックを行うケースが多く、リアルタイムの店舗の状態を把握しづらい傾向にありました。紙のチェックシートに記入した後、PDF化してからメールでマネージャーへ送信する流れになっており、手間がかかることから営業時間内のチェックが難しくなっていたのです。

そこで同社では、i-Reporterを導入し、QSCチェックをタブレット上で行える仕組みを構築しました。チェック完了後は、サーバーにチェックシートをアップロードするだけでマネージャーや本部へ共有できるようになり、業務効率化につながっています。サーバーには画像もアップロードできるため、店頭施策の運用状況の把握にも役立っています。従来の紙ベースの管理方法と比較すると、年間にして約220万円のコスト削減を実現しました。

こちらの事例の詳細は下記のページをご確認ください。
【i-Reporterユーザー事例】i-Reporterを国内800店舗に展開しQSCチェックを電子化。

物流DXに取り組んで自社の競争優位性を高めよう

今回は、物流DXの概要や必要性、メリット、よくある課題などについてお伝えしました。物流現場は業務内容が複雑でありながら、人力などアナログな方法に頼っているケースが多く、DXの推進による業務効率化の余地が大きい傾向にあります。帳票の管理をはじめとした日常的に発生する細かな業務からDX化を進め、業界における自社の競争優位性を高めましょう。

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